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コラム:建設系

建設・土木分野における個別要素法解析

建設ビジネス推進部 建設営業課 曹 国強

[2020/10/29]

建設・土木の分野においては、静的段階施工解析から広域の浸透流解析、液状化を考慮した動的解析、不連続岩盤及びき裂進展の問題や岩盤・地盤の崩落解析など様々な手法がありますが、それらの技術のうち大変形、不連続問題について紹介します。
例えば、岩盤斜面の安定性評価では安全率に代表される強度評価が一般的に行われます。安全率が1より小さくなりますと、斜面が不安定ということになりますが、変形量について十分かつ適切に評価しないと、崩壊することは言い難いです。斜面の変形を正確に考慮して合理的に設計することを考慮する場合は、大変形または破壊理論を導入した解析手法が必要です。大変形、不連続体解析の手法は、有限要素法、有限差分法、個別要素法、不連続変形法、粒子法など色々があります。そのうち、有力な手法として個別要素法が挙げられます。
個別要素法(Distinct Element Method:DEM)は、Cundall(1971)によって提案され発展してきた不連続体の運動を解く解析手法です。最初は岩盤力学の問題に導入され、その後地盤の問題に応用されました。現在では様々な問題に適用されています。DEM は有限要素法のように仮想仕事の原理に基づき系全体としてエネルギー最小となるような解を求めるという制約はなく、粒子あるいはブロック要素の運動は物理学の基本原理(Newton の第二運動法則)に従って解を求めています。

粒状体タイプ個別要素法(PFC)

本手法は解析対象物を剛体球の集合体として取り扱うことで、土粒子、砂、粉体などの粒状体の流動・混合挙動を取り扱うことができます。
ここでは、PFCによる建築物直下で生じる断層運動を模擬した模型実験の再現解析を紹介します。個別要素法は断層面で生じる変位の不連続性、及び大変形を解析することが可能であるため、地表面付近の地盤物性を適切にモデル化することにより、地中で生じた断層変位が地表面まで伝わる様子を評価することが可能です。図1はシミュレーションと実験結果の比較を示します。実験と同様に底面に断層変位を与えていますが、地表面構造物を考慮しないケース1では、すべり線は底からほぼ垂直に発達し、地表面近くで左右に分かれます。地表面構造物を考慮するケース2では、構造物の左側付近で地表面の急激な変化が見られ、実験結果と一致しています。

図1 断層運動を模擬した模型実験の再現解析

図1 断層運動を模擬した模型実験の再現解析

ブロックタイプ個別要素法(UDEC)

本手法では、解析モデルを非連続体ブロックの集合体とし、それぞれのブロック運動および相互作用は、運動法則と力・変位関係式をセットとして交互に解いていきます。ブロックは剛体のみならず、弾性体や塑性体などの変形体とすることも可能です。複雑な節理面を持つ岩盤などのブロック集合体の、安定解析や動的崩壊過程をシミュレートすることが可能です。また、応力と流体の連成問題として、ブロック内部とともにジョイント面にも浸透流解析が可能です。
図2は繰り返し一面せん断試験の解析例です。ここで、ジョイントの構成則はMohr-Coulomb則を用いることが多いですが、破壊面の連続性を考慮するC-Yモデル(Continuously-Yielding Model)も利用できます。C-Yモデルを用いることにより、繰返し載荷などの動的問題に精度よく解析することが期待できます。

図2 繰り返しせん断力載荷におけるせん断応力とせん断変位結果

図2 繰り返しせん断力載荷におけるせん断応力とせん断変位結果

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