コラム:超音波・電磁技術
材料・工学技術部 応用技術第2課 猿橋 正之
[2020/05/26]
非破壊検査、計測、製造、自動車分野など、現在多くのお客様にご利用いただいている、超音波解析ソフトウェアComWAVEのマイナーバージョンアップ版(Ver.10.0.5)が、先月リリースされましたのでご紹介いたします。
球面超音波振動子や音響レンズ等で超音波を収束させて探傷を行う手法を用いると、微細な欠陥を検出する際の空間分解能を向上させることが可能であることから、近年、超音波顕微鏡をはじめとした超音波収束精度の向上についてのお問い合わせを多くいただいており、今回のバージョンアップでは、その分野の計算を支援する機能の開発に注力いたしました。
主な新機能は以下の通りです。
「凹面探触子のモデル化をもっと簡単に行いたい」というお客様のご要望から、今回、球面半径、幾何学的焦点距離、開口直径など形状パラメータを指定するだけでComWAVEのプロジェクトのひな形を生成できるテンプレートツールを装備しました。これにより、球面、楕円面をもつ振動子、音響レンズからなるモデルを簡単に作成できるようになりました(図1)。
この分野の計算で使用される周波数は一般的に高くなり、短い距離でも波数換算では長距離伝搬となることが多くなります。その場合、ComWAVEでは、有限要素法計算と外挿計算を組み合わせたハイブリッド計算でこうしたご要望にお応えしており、先のテンプレートを利用することで、探触子周りのハイブリッド計算の設定も可能となっています。
ハイブリッド計算の一例として、15MHzの球面振動子を用いた、水浸法による丸棒中の微小欠陥探傷の計算例を図2、図3に示します。
ComWAVEは元来比類のない高速計算が特徴ですが、ハイブリッド計算では、これまで、手法の違う計算を受け渡すデータ処理などにボトルネックが存在していました。今回のバージョンでの改良により全体のスループットを大幅に向上することができました。ハイブリッド計算の2次元モデルへの対応と合わせて、長距離伝播解析でも多彩なパラメータサーベイを実施することが可能です。
今回ご紹介した機能を含む新バージョンは、ComWAVEお客様広場ページからダウンロード可能になっておりますので、ぜひご利用ください。
[1] 池上泰史、猿橋正之、超音波探傷試験のためのFEM大規模・高速シミュレータの開発、超音波テクノ、pp.33-43、2018年9-10月号
超音波解析ソフトウェア ComWAVE についてはこちら
http://www.eng-eye.com/ComWAVE/