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空港・空域

間隔制御による空港容量拡大に関する分析

DSビジネス推進部 コネクテッドビジネス課 久保 思温

[2020/05/26]

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大以前では、航空需要は増加傾向が予測され、首都圏や一部地方の混雑空港においては航空会社からの発着希望に応えきれず容量不足が問題となっていました。容量増加のための検討が様々なされており、羽田空港の新ルート運用が開始されました。

このような空港の運用を効率的に行う方策は、近年継続的に求められています。そのような情勢の中、私たちは出発機と到着機の戦略的な順序付け(Scheduling)と入れ替え(Position Shifting:PS)による滑走路容量の拡大可能性に関する分析を容量制約が厳しい南風運用時の羽田空港を対象に行いました。

南風運用時の羽田空港はB・D滑走路が到着専用,A・C滑走路が離陸機専用で運用され、D滑走路着陸機(以後D着陸機)とA・C滑走路離陸機(以後,A・C離陸機)が交錯するような従属関係にあり、D着陸機の間を縫ってA・C離陸機を処理させています。この交錯するように運用している関係上、D着陸機の間隔によってはA・C離陸機が処理できないといった処理効率上のロスが一定程度は発生してしまうのが現状です。

このD着陸機の間隔を調整するように運用したらどの程度効率化できるのかを明らかにすることが本分析の目的となります。

図-1 羽田空港の南風運用時の滑走路運用(旧飛行経路)

図-1 羽田空港の南風運用時の滑走路運用(旧飛行経路)

図-2 本分析に用いたシミュレータの概要

図-2 本分析に用いたシミュレータの概要

図2は、今回の分析用に開発したシミュレータの概要図です。主な特徴は実際の管制運用における管制官の意思決定を想定し、時々刻々と変化する出発機の状況を考慮して到着機の間隔制御を模擬する点です。

具体的には、到着機がターミナル空域に入る時を意思決定のタイミングとし、その時点で使用可能な確定情報と予定情報により、当該到着機が着陸するであろう時刻に離陸待機状態にある離陸機数を予測し、到着間隔を決定する、という点が最大の特徴となります。また、到着間隔のみを調整するという簡易的な方法を用いることで、実運用上の難しさをなるべく考慮した形で分析を行いました。

また到着間隔を制御するためには出発時刻や到着時刻などの情報が必要ですがある程度の予測が生じます。実運用上では予測には誤差が生じるため、「予測精度」という項目でこの誤差に関しても考慮しました。

表-1 アウトプット例

表-1 アウトプット例

表-1は本分析のアウトプットの一例です。ベクタリング量の上限、予測精度、到着間隔制御で参照する離陸滑走路、を変更した場合の結果一覧で全滑走路の平均遅延のみを表しています。この結果から、到着間隔制御を実施したほうが制御無しよりも遅延時間が小さいことが多く、間隔制御が空港の容量拡大に対し一定の効果があることが示唆されました。

CTCはこのような空港の運用に関する分析やシミュレーションに取り組んでいます。

この文章は、第60回土木計画学研究発表会にて茨城大学殿と共同で発表した内容を一部編集したものになっています。