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コラム:建設系

建設現場の未来のカタチ

建設ビジネス推進部 建設システムサービス課 藤田 未央子

[2019/03/13]

建設現場といえば「ガテン系」「力仕事系」、かつての「きつい・きたない・危険」という3Kのイメージが、昨今変わろうとしていることをご存知でしょうか?

国土交通省が推進する建設業の生産性向上施策「i-Construction」は2019年で4年目を迎えます。これは、調査・測量から設計・施工・維持管理までのあらゆるプロセスで様々な分野の産学官が連携して革新的な技術の導入を進めることで、生産性が高く魅力的な新しい建設現場を創出することを目的とした取組みです。

特にここ数年、異業種との技術連携が急速に加速し、自動建機を用いた無人化施工、高度な非破壊検査技術を用いた点検・診断、AIによる画像解析、MR(複合現実)を活用した維持管理など、様々な技術が実際の建設現場に導入され効果を上げています。2020年に第5世代移動通信システム(5G)のサービスが始まれば、映像などの大容量データをリアルタイムで伝送できるようになりこれらの技術はさらに進化することでしょう。

CTCは長年にわたる様々な建設分野向けのITサービスの提供を通して、建設品質の向上に貢献してきました。特に土木構造物の施工に関してはCIM(Construction Information Modeling/Management)に早い段階から取り組んできた実績があり、これまでダム、トンネル、シールド、地下構造物、道路、橋梁、港湾等、様々な工種の建設現場でCIMの取組みを支援してきました。

「SIer(Systems Integrator)企業なのに、建設現場?」と、少し意外に思われる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、建設現場向けのCTCの取組みについてご紹介いたします。

3次元モデルの活用

CIMは建築分野で成果を上げているBIM(Building Information Modeling)の考えを土木分野に導入するもので、ITツールと3次元モデルを導入・活用することを取組みの柱としています。

土木構造物の建設現場は、自然環境と直接対峙するという点で技術的な特異性があります。構造物を建設する立地条件や景観、周辺地域の地形・地質ないしその地下構造、水循環、気象条件等の物理的な条件、さらに将来にわたって生態系に与える影響などを考慮する必要があり、土木構造物の多くはオーダーメイドの一品生産です。実際に建設現場に携わるお客様からお聞きする課題・ニーズも多種多様で、ともに課題を解決する術を模索させていただく中で日々その難しさを実感しています。

近年、建設現場で活用が進むレーザースキャナーやGNSS(全地球航法衛星システム)、各種計測センサー、IoT(Internet of Things)ツールなど個々の断片的な情報をより有効に活用していただくために、CTCでは各種施工現場を3次元で可視化するサービスを展開し、3次元モデルと属性情報を組み合わせて統合管理する手法をトータルでご提案しています。

巨大な土木構造物にかかわる情報を一元的に集約することで、空間全体の傾向を見て次の判断をどうするか、大局的な視点で分析・判断をおこなう礎となります。鮮度の高い情報をどういう切り口で視るかというのは非常に重要な観点で、一朝一夕では身につかないコツがあるものです。建設現場職員だけでなく多数の工事関係者と同じイメージを共有していただくため、経験を積んだ技術者の方から次の若い世代へ多くの技術(勘と経験と度胸とも言われます)を伝承するためにも、3次元モデルは有効なコミュニケーションツールとしてご活用いただいております。

図

解析技術との連携

長年培ってきた有限要素法(FEM 解析)などの数値解析技術と、i-Construction/CIMの考え方を連携させる取組みにも着手しています。地盤を構成する土砂や岩石などの性状は複雑かつ多様、不均一であり、調査・設計段階には把握しきれない多くの不確実性を前提として、設計時や施工前にFEM解析が実施されることがあります。建設現場に設置された各種センサーの計測実測値を解析結果と比較し、不確実性を含む解析条件を精査することで、施工の安全を担保したより効率的で精度の高い施工管理を実施できるのではないかと考えます。

ナレッジの蓄積・流通

土木構造物の特異性は言うまでもなく公共・公益性、つまり人の生命や財産を守る社会基盤であると同時に、長期にわたり未来に継承するべき社会の資産であるという点です。i-Construction/CIMは建設ライフサイクルの一連の過程で全段階最適化を目指すものですが、設計や施工、維持管理の分離発注により各プロセスの主体となるプレイヤーが異なり、情報が流通されにくいことが課題となっています。

CTCでは建設分野向けの情報共有のためのクラウドサービスを提供しています。施工段階で発生した新たな地形情報や設計変更の理由、施工情報等を3次元モデルに含めて蓄積することで、維持管理段階における不具合発生時の診断を速やかにします。社会基盤の整備・保全に関する情報を次世代へ安定して引き継ぐ環境を整えることは、非常に重要なミッションだと考えます。

これからも急速に進化する新技術をより効果的に導入できるよう、お客様のニーズに沿った建設分野向けのITサービスをご提供していきます。幅広い視座に立って新しい時代の変化へしなやかに対応するとともに、未来の子供たちが安心して暮らせる社会の持続に寄与していきたいと考えています。

CTCのi-Construction/CIM最新情報のご紹介ページはこちら
http://cimjapan.com/index.html