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コラム:熱流体

シミュレーションとAI(機械学習)を用いた制御の構築

アプリケーションサービス部 CAEサービス2課 小山 敦久

[2019/01/11]

ここ数年AIという言葉をよく聞くようになり、制御系の設計においてもシミュレーションと機械学習を用いてフィードフォワード制御の制御モデルを構築する手法が提案されています。ここではその手法についてプレス機の制御を例に挙げて簡単にご紹介します。

まず背景として各種機械やプラントの制御に利用されているPID制御(フィードバック制御)はシンプルで制御性の良い制御ですが、目標値と測定値の偏差から操作量を決定するため外乱に弱いという欠点があります。すなわち、フィードバック制御では外乱が発生してもその影響が測定値に表れてからでなければ修正できず、外乱の影響を避けることができません。

例としてプレス機の絞り加工では以下の図のようにスライドに取り付けられた上型をクッションに取り付けられた下型に押し込んで成型しますが、シワや底抜けを防ぐためにはクッションにかかる力を制御し、材料を押さえる荷重を調整する必要があります。これをPID制御で行った場合、スライドの変位が外乱となりシワ押さえ荷重の目標値への追従性が悪化する場合があります。

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上記のようなフィードバック制御の欠点を補う方法として外乱を検知し、外乱が測定値に影響を与える前にその影響を打ち消すフィードフォワード制御があります。ただしフィードフォワード制御では検知した外乱を打ち消すために必要な操作量を予測する制御モデルが必要となります。

この制御モデルの1つとして応答曲面があります。応答曲面はシステムの応答をいくつかの説明変数で記述したモデル式であり、制御モデルとしては目標値を得るための操作量と外乱、測定値の関係を示すことになります。応答曲面の構築には説明変数に対するシステムの応答のデータが必要となりますが、これを実験で収集する場合には時間とコストがかかる場合があります。そこでデータの収集をシミュレーションで実施し、そのデータを機械学習することで応答曲面にあたる数式モデルを構築する手法が提案されています。

上述のプレス機の例では1次元熱流動解析ソフトウェアFloMASTERにおいてスライドのある変位パターンに対してクッション力を入力、シワ押さえ荷重を出力とするモデルを構築します。そしてそのモデルに乱数で生成したクッション力を与えて解析することで、スライド位置とクッション力、シワ押さえ荷重の関係を示すデータが収集できます。最後にそれらのデータを機械学習することで制御モデルを構築します。

ここでは簡単な事例を紹介しましたが、シミュレーションとAIの組み合わせには色々な可能性があると考えています。CTCではこういったシミュレーションの新しい利用方法も検討していきます。

関連製品についてはこちら

1次元熱流動解析ソフトウェアFloMASTER
http://www.engineering-eye.com/FLOWMASTER/