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コラム:プラント

プラントや工場におけるIoTの目的と活用方法

広域エネルギー・プロジェクトチーム 児玉 総司

[2018/08/24]

1. 目的

IoTの活用が話題になり、取組みを進めている会社も多いようです。広い意味で使われているIoTという言葉ですが、私は“プラントや工場における狭義のIoTの目的”を、次のようにとらえています。
「計測データとITを活用した自動化を進め、一方で人間はより高付加価値な仕事に注力し、生産性を高めること」(ここでいうITには、計測/通信/データ管理/機械学習/端末などの技術を含みます。)

このとらえ方は、以前の仕事で伺った、あるプラントの所長のお言葉がヒントになりました。
「日ごろの改善活動でよく出るアイデアとして、新たな監視やチェックの項目を加える、というものが多い。しかし本当は監視やチェックといった仕事はコンピューターに任せ、人間は人間にしか出来ない仕事に力を注ぎたい。たとえば、定期点検時の設備停止期間を短くする方法を考え工夫するなど。」

2. 活用方法

生産性向上をもう少し具体化すると、稼働率や品質や効率の向上があるでしょう。これらの目的に対するIoT活用の方法として、①設備の運転状態や製造物の品質を示すデータ(温度、流量、振動など)について、コンピューターによるリアルタイム集中監視をする、②これらのデータを入力する機械学習システムで、品質や設備の現状を刻々と判断し、異常の予兆を検知して人間に知らせる、などがあります。

海外では、このようなIoTの活用事例を、コスト効果を含めて公開している企業もあります。たとえば米国の発電事業者であるLuminant社は、以下のページで、検知した不具合の予兆と、予兆の段階での対策により回避できたコストを公開しています。
https://www.luminant.com/poc/success-stories/

(上記サイトの要約表)

設備 不具合内容 検知した予兆 損失回避額
発電機 ベアリング摩擦 タービン軸受振動 $1,781,795
誘引ファン ファン軸受け損傷 ファン軸受け振動 $1,291,738
復水器 発電効率低下 循環水ポンプの作動電流 など $500,213
空気予熱器 潤滑油フィルタの詰まり 軸受温度、油圧 $1,582,748
一次空気通風機 供給オイルフロー停止 軸受温度 $360,000

また下記は、OSIsoft社のPIシステム(世界で最も実績が多いIoTデータベース)のユーザカンファレンスの発表事例のページです。オイル&ガス、金属、採掘、電力、製紙、水道、などの業界別の、IoTの活用事例やそのコスト効果が多く紹介されています。
https://www.osisoft.com/about-osisoft/presentations/

3. おわりに

この数年、IoTや機械学習・AI活用のニュースが日々あふれていて、少し焦ってしまうほどです。しかし“まだニュースになる(=珍しいから取り上げられる)状況だ”とも言えます。自社の経営課題の解決にIoTという道具が使えるかという検討を、これから始めればよいと考えています。

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