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部材設計と座屈(鋼構造設計規準/許容応力度設計法)

アプリケーションサービス部 CAEサービス1課 佐野 秀昭

[2018/08/24]

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工場の建屋や配管の支持構造物などは鋼構造とされることが多くあります。このような構造物は、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧力・地震力・水圧・土圧など、作用する荷重とその組合せに対して安全を確保する必要があります。鋼材の特性として重要なものとして降伏応力がありますが、鋼材は降伏応力に達するまで弾性(線形)の挙動示し、降伏点に達した後は塑性(非線形)の挙動になります。鋼材の弾性範囲内で構造解析し部材を設計するのが1次設計となります。

1次設計は全ての鉄骨構造物で要求されますが、特に階数3以下、高さ13mの構造物では、これで部材の設計が可能です。一般的に1次設計では構造物はビーム要素でモデル化し弾性解析が行われ、部材力を算定します。部材力から各部材に作用する応力が算出されますが、弾性として計算されます。また、規準に基づいた計算式で許容応力度を計算し発生応力と比較して、断面算定が行われます。
応力にて評価するため、このような設計方法は許容応力度設計法と呼ばれています。

塑性前の弾性範囲内を想定して解析される許容応力度設計法ですが、解析は線形解析とする場合が多いですが、非線形の座屈挙動が考慮されることになります。
つまり、許容応力度は座屈し難い部材では大きく、座屈し易い部材では小さくなります。

まず、部材設計として細長比λが検討されます。鋼構造設計規準では圧縮材の細長比250以下、柱材では200以下とする規定があります。ただし、引張材の細長比が米国規準AISCなどで300と規定されているのに対し、鋼構造設計規準では明記されていません。細長比は座屈長さと断面2次半径から求まり、断面2次半径は断面二次モーメントと断面積から求めます。このため細長比は1つの部材に対して2つ算出されますが、大きい値に着目します。座屈長さが同じであれば、弱軸側(座屈し易い側)ということになります。

許容圧縮応力度の計算では、細長比λが限界細長比Λより大きい場合は弾性座屈となりオイラー座屈式が考慮され、限界細長比Λより小さい場合は非弾性座屈式が考慮されて許容圧縮応力が計算されます。

次に許容曲げ応力ですが、こちらでは横座屈により影響を受けます。部材に曲げモーメント作用すると、部材が曲げによる変形と横に捩れる現象が現れますがこれが横座屈です。そのため、許容曲げ応力度の計算にはサンブナンのねじり定数や曲げねじり定数も考慮されることになります。許容曲げ応力度は降伏モーメントと弾性横座屈モーメントより算出する曲げ材の細長比と、弾性限界細長比と塑性限界細長比の大小関係より3つの式から求めることができます。ここで弾性座屈細長比は定数となっていますが、塑性限界細長比は部材に発生しているモーメント分布にて決定されます。横座屈の考慮は複雑な式となっている一方、円形鋼管や角形鋼管または弱軸回りの曲げを受ける部材の場合は、横座屈が発生しないので許容曲げ応力は許容引張応力度と同じ値を使うことができます。

このように鋼構造設計規準に従った1次設計では、解析自体は基本的には線形解析ですが、応力評価において座屈を考慮しています。

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