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コラム:超音波・電磁技術

車室内防犯センサ解析(100億要素解析事例)と
クラウド利用について

アプリケーションサービス部 CAEサービス2課 猿橋 正之

[2018/06/15]

安全、低コストで、物を壊さず品質や状態を評価できる超音波の利用範囲は、非破壊検査、計測、洗浄、接合など多岐に渡っています。自動車分野でも超音波センサは様々な用途で利用されており、その1つに車室内防犯センサがあります。車室内防犯センサは、車室内に取り付けた送信センサから超音波を照射し、伝搬、反射を繰り返した後、同じ車室内に取り付けた受信センサに到達した波の信号強度を評価することで侵入の検知を判定します。車室内には様々な反射材、吸収材が存在し、車室内の超音波伝搬の様子を実験だけで把握するのは困難ですが、自動車形状、超音波センサを模擬してシミュレーション(超音波解析)をすることで車室内の音場分布を可視化して、超音波の伝搬状況、受信信号強度を確認することが可能です。

図1 車室内防犯センサ解析、3次元音場分布図(100億要素)

図1 車室内防犯センサ解析、3次元音場分布図(100億要素)

図1は、自動車を丸ごと含むように設定した2700×1700×1400mmの領域について、周波数40kHz、空気中音速343m/s(波長λ8.6mm、要素サイズ0.86mm)の条件で3次元圧力場の解析を行った結果(ある時刻の3次元音場分布)で、波が3次元的に広がっている様子が分かります。今回のモデルは全体で約100億要素の大規模計算になりますが、今回使用した弊社の超音波解析ソフトウェア ComWAVE [1]では独自のアルゴリズムによって、使用メモリ300GB、CPU計算時間約7.9日(4並列)、約2.9日(16並列)と現実的な時間での計算を可能にしています。

このような大規模計算、高速計算ができるのがComWAVEの最大の特長となっていますが、これまでは大掛かりなマシン環境をあらかじめ用意する必要があり、その恩恵にあずかるのは難しい面がありました。しかし、最近ではクラウド環境が身近になって、手軽に大規模高速計算ができるようになってきており、前述の車室内防犯センサと同様の解析でさらに大規模な140億要素規模のモデルについて、従来のオンプレミス環境で2週間(16並列)要していた計算が、クラウド利用(Rescale [2] を利用 )により約3日(64並列)に短縮した実績があります。

クラウド利用のメリットとして、(1)ユーザ独自のHPC環境の構築・運用管理が不要、(2)ユーザの好きなタイミングで最新のHPC環境を利用可能、(3)大量の計算を同時に実行できる点が挙げられ、また今回利用したクラウドではCPU以外に最新のGPGPU(Tesla V100)も選択可能となっており、GPGPUを利用した高速計算も可能となっています(図2)。

図2 CPU、GPGPU計算時間比較結果

図2 CPU、GPGPU計算時間比較結果

Linuxクラスタマシン、クラウド環境特有の作業(ファイル転送、計算連続実行など)を支援するツールを含む、ComWAVE最新バージョンのリリースを今夏、予定しています。ご期待ください。

参考文献
  1. 池上泰史、超音波シミュレータ「ComWAVE™」クラウドの非破壊検査への適用、映像情報インダストリアル 通巻891号(2018-05-01)
  2. クラウド HPC Rescale、http://www.ctc-g.co.jp/solutions/rescale/
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超音波解析ソフトウェア ComWAVEのご紹介ページはこちら
http://www.eng-eye.com/ComWAVE/index.html