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コラム:熱流体

航空機翼内タンクのバッフル(穴)のリダクション

アプリケーションサービス部 CAEサービス2課 橋本 元信

[2018/04/13]

航空機の燃料タンクは主に胴体内や主翼内に設けるのが一般的です。これら以外の保管場所として機種によっては尾翼、そして小型の航空機の場合はドロップタンク、すなわち胴体下や翼下に設置された落下式の補助燃料タンクなどがあります。何れにしても燃料が消費される事により生じる航空機の重心移動(変化)や揚力の低下を可能な限り小さくする様に設計します。

航空機の翼内は桁とリブで構成されるボックス構造であり、曲げやねじりに強く、軽量化を実現します。そしてこのボックス構造を密閉構造に変更する事で、翼内タンクとして使用できます。また翼内タンクは、航空機の旋回などにより発生する液面の揺れやスロッシング(振動による揺動)を抑制する為にリブを幾つか配置し、翼内タンクを複数の領域に分割する場合が多いです。

下図は翼内タンクのイメージです。このタンクでは3つの領域に分ける為に2つのリブが配置されており、また各領域での燃料の液位を同じにする目的で、リブにバッフルと呼ばれる“穴”が複数設けられています。

イメージ

航空機の翼内タンクのイメージ図とFloMASTERモデル化例

このようなリブを有する燃料タンクの液位まで考慮(検討)したい場合、3次元流動解析(3DCFD)を使用した比較的詳細な解析が可能と考えます。しかし燃料タンクを含めた燃料系統全体の解析を検討したい場合や、バッフルのサイズや配置を変更した検討を行いたい場合は、時間的そして検討する為の環境構築などに多くの労力を費やし、また制約が発生する可能性が考えられます。従ってこのような検討を行う場合は1次元の流動解析(1DCAE)を活用するのが一般的です。

1次元流動解析であるFloMASTERでは、MultiArmタンク要素を有しており、最大48個のバッフルを表現する事が可能です。またカスタマイズする事でこの数以上にバッフルを表現する事が可能と考えますが、個々の穴を接続する作業とそして収束性の問題から、効率の良いモデル化とは考えにくいです。

そこで同じ高さのバッフルをまとめ、1つの穴としてリダクションする方法をご紹介します。

同じ高さのバッフルをまとめる際に、各バッフルの断面積の総和を新たな穴の断面積とすることで、各バッフルと同じ流動係数(抵抗係数)を使用する事が可能です。しかし断面積が大きすぎてしまうと、高さ方向に仮想的に配置された新たな穴が重なる事になり、流出入が実際よりも早く開始されてしまい、解析精度が悪くなる事が予測できます。

このような場合流動係数に補正を施します。例えば流動係数に断面積の寄与度を付与する為に、総和した断面積をバッフル1つ辺りの断面積で割り二乗した無次元数を流動係数に乗算するなどです。このような補正と実測結果や3DCFD結果とコリレーションする事で、より精度の高い1DCAEでの検討が可能と考えます。

なおこの方法はタンクの床面が水平な状態を想定しております。従って離着陸時など迎角が変動するような場合、このリダクション方法だけだと対応できません。このような場合、バッフルの流動抵抗をバルブ要素で表現する事で、動的な流動係数の変化にも対応すると考えます。

関連製品についてはこちら

1次元熱流動解析ソフトウェアFloMASTER
http://www.engineering-eye.com/FLOWMASTER/