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コラム:プラント

【プラント】設計規格による配管系の応力解析の基礎

科学システムサポート部 建設サポート課 本橋 賀津彦

[2017/12/20]

概要

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発電プラント、石油精製プラント、化学プラント、ガス供給プラント等の設備には、数百・数千もの配管ラインがあります。これらの配管には、自重や運転時の熱膨張の他に、地震・風・機器や内部流体による振動等の様々な荷重が作用します。設計や解析において、これら荷重に対して配管ラインに過度な変形・応力や流体の漏えい等が生じないように、配管ラインのルートや配管を支持するサポートの種別や位置の選定を行っていきます。例えば、流体の温度によって配管が熱膨張しますが、配管サポートが少なければ熱応力が低減し、逆に、配管サポートが少ないと地震荷重に対して大きな変形や応力が発生してしまいます。それぞれの荷重に対して大きな応力等が生じないように、バランス良く配管サポートの配置や配管ルートの選定を行うことが配管設計の役割となります。

汎用の有限要素法では、複雑な構造物の挙動をより正確に解析することが求められますが、プラント設備の膨大なすべての配管に対して、メッシュを切って詳細なモデルを作成して解析を行っていくことは現実的ではありません。これらの配管を効率良くかつ安全に設計・解析していくことが必要となります。プラント設計では、設備の種別ごとに設計や解析のルールを定めた法規・基準・指針等の設計規格が規定されており、これらにしたがって設計や解析を行っていくことになります。配管は梁でモデル化し、エルボや分岐部の構造特性は係数等に置き換えて簡略化を行います。

設備の種別ごとに様々な設計規格が規定されています。米国の規格であれば、火力発電設備の配管の設計についてはASME B31.1規格、石油精製や化学プラントの配管はB31.3規格、原子力設備の配管はBPVC Sec.III NB/NC/ND等で規定されています。このような設計規格は米国だけでなく各国で規定されています。米国規格の内容に準拠したものもあれば、独自の設計思想を取り入れたものもあります。各設計規格においては、規定されている設計ルールや手順が異なっています。仮に同じ条件の配管ラインがあったとして、それぞれの設計規格にしたがって解析および評価を行えば異なった結果となり、評価の合否の判定が異なることもあります。また、米国規格は2~3年ごとに改定が行われ、設計に使用する条件・係数・計算式等が変更される場合も多々あります。規格の年度版によって合否の判定が変わることもあります。日頃から設計規格の内容を見直し、その内容を正しく理解して設計に反映させることが重要となります。

なお、AutoPIPEにおいては、米国のASME B31.1(火力)、B31.3(プロセス)、B31.4(液移送)、B31.8(ガス移送)、BPVC Sec.III NB/NC/ND(原子力)をはじめ、世界各国の配管設計規格に対応した応力算定および評価を行うことができます。日本国内では、高圧ガス設備等耐震設計基準(レベル1およびレベル2地震動)、発電用原子力設備規格設計・建設規格(クラス2配管)、消防法・石油パイプライン技術基準に対応しています。

配管設計では、設計規格の規定や制約を受けることになりますが、面倒なことばかりではありません。設計規格に示される内容を活用することで解析の手順を簡略化できる場合もあります。配管設計では、設計規格とうまく付き合っていくことが重要となります。