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コラム:マテリアルデザイン

ICMEの取り組み(その1)

CAEソリューション営業部 野本 祐春

[2017/12/20]

概要

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ICME(Integrated Computational Material Engineering)という言葉は残念ながら日本では未だ一般的ではないようです。しかし、欧米は元より中国においても“物作り”の研究開発の場においては一般用語と定着しています。ICMEの始まりは2010年のオバマ大統領による一般教書演説に端を発しており、2011年に米国においてMGI(Materials Genome Initiative)が発足し既に2.5億ドルもの資金が投下されています*1。材料ゲノムについては日本でもその後活動を開始しておりご存じの方も多くおられると思います*2

その目的は新材料を過去に比べて2倍以上のスピードと圧倒的に低いコストで発見&設計することです。そのために、データベース、シミュレーション、機械学習などのコンピュータテクノロジーをフルに活用して公共インフラとして整備すべく研究開発が各国で進められています。そのような背景から、機械部品や構造部材の設計を材料設計から最適化することを目的とするICMEとMGIは有機的な関係があります。ICMEはミクロスケールの材料設計とマクロスケールの部品設計をつなぐマルチスケール解析の手法開発とインフラ整備が目的となります。米国でのICMEはMGIと同時にスタートしすでにミシガン大学からはマルチスケール解析基盤PRISM*3が公開されています。

弊社で販売しています計算状態図ソフトウエアThermo-Calc*4は合金を計算上で設計することから最初かつ基本的なMGIの実用例です。また、同様に弊社で販売しているマルチフェーズフィールド法ソフトウエアMICRESS*5はThermo-Calcの熱力学データベースと連携して合金のミクロ組織形成予測を行います。合金のミクロ組織からその機械特性を決定することができることから、MICRESSはICMEの重要なツールとなります。したがって、弊社では数年前からThermo-CalcとMICRESSを基盤としたマルチスケール解析手順の開発を進めています。次回にそれらについてもう少し詳細について述べさせて頂きます。