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コラム:プラント

国際設計規準に従った鉄筋コンクリート部材の設計

科学システムサポート部 建設サポート課 佐野 秀昭

[2017/04/14]

一般的にコンクリートは圧縮に強いが引張に弱く、鋼材は引張に強いが圧縮では座屈などの問題が生じ易い材料です。鉄筋コンクリートはお互いの弱点を補い合う優れた建材と言えますが、性質の異なる材料を組み合わせているが故に鋼部材に比べて設計計算は一般的に複雑になります。

鋼部材は降伏応力に安全率を掛けた値が基準となり、許容応力を求めます。つまり、降伏の手前の範疇なので挙動は線形です。これに比べて鉄筋コンクリートはコンクリートと鉄筋の複合材であり、鉄筋が力を受け持つためコンクリートのひび割れを許容するのが普通です。このため、破壊モードは鉄筋の降伏・圧縮側コンクリートの圧壊・せん断破壊など複雑な挙動を示すため、設計計算ではこれら全てを考慮しなければなりません。故に設計範囲内でも計算は線形範囲ではなくなり、更に主鉄筋やせん断補強筋なども検討する必要があり、この辺が設計を複雑にしている要因と言えます。

鉄筋コンクリートは配筋を設置した型枠内にコンクリートを打設するため、形状に対する自由度高く、また耐久性・遮音性・水密性にも高いため、梁・柱・壁・床・基礎などさまざまな部位に適用されます。設計が複雑な上に、形状が多様、設置される場所もさまざまで設計者は、その部材に応じた計算が必要になります。

梁設計は一番基本的な計算と考えらます。支配的な断面力は一軸の曲げモーメントのため、これにより主鉄筋を決定します。また、せん断力に抵抗するためにあばら筋を決定します。
柱設計になると一気に複雑になります。支配的な断面力は軸力(圧縮力)であり、構造物が水平方向の荷重を受けたときは曲げモーメントが発生するが、地震や風などの水平荷重はどちらから作用するか分からないので、2軸の曲げモーメントを考慮しなければなりません。また、せん断力に抵抗するために帯筋を決定します。

壁や床設計の場合は、主鉄筋は1方向ではなく、2方向考慮することになります。また、開口部などが設けられる場合もあります。
基礎の場合は、地盤等に直接接触し、形状もさまざまなため、特別な検討が必要になります。設計が必要な部位もフーチング部分やペデスタルや柱など多様です。また、直接基礎や杭基礎などの区分もあります。上部からの力を柱やペデスタルから受けるので、押し抜きせん断の評価や基礎の転倒や滑動などの評価も考慮しなければなりません。

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近年、開発途上国でも急速な経済成長が進み、日本企業も工場を移転するなど方策を実施しているため、インフラ整備が進んでいます。しかし、高度な技術力や生産力を持たない国では日本を含めた諸外国企業が支援を行っている状態です。
このため、日本の技術者も国際設計規準に従った設計に対応することになります。
以下に幾つかの国と地域の鉄筋コンクリート設計の規準を上げてみました。

米国 ACI318 American Concrete Institute
英国 BS8110 British Standards
EU EC2 European Code
インド IS456 Indian Code
シンガポール CP65 Singapore Standard

どんな設計者でも未知の設計コードでの設計は、大変な労力が必要となります。
構造物が鉄筋コンクリートとなるとなおさらです。通常設計コードには必要鉄筋量を決定する評価式に加え、最小鉄筋量・かぶりの規定・鉄筋径・鉄筋間隔・コンクリートや鉄筋の材料定数などの多数の項目が存在します。

上記のような大変な仕事を容易にするには、ソフトウェアが有効です。ソフトウエアが全て行ってくれる訳ではないですが、各設計規準に精通した技術者が開発しているため、設計者の負担を大きく軽減することを実現可能です。

鉄筋コンクリート設計STAAD RCDCのご紹介ページはこちら
http://www.engineering-eye.com/STAAD/details/software/staad_rcdc.html