コラム:超音波・電磁技術
科学システムサポートチーム MBD・超音波技術課 入谷 佳一
[2016/10/14]
PZFlexは、圧電・超音波伝播のシミュレーションを行うための有限要素法の解析コードです。医療・非破壊分野でのトランスデューサーや、水中ソナーを中心に圧電材を用いたさまざまなデバイスの開発にご利用いただいております。7月にリリースされました新バージョンPZFlex2016では、解析機能について多くの強化が図られました。今回は新機能の中から、解析時間の大幅短縮につながるインピーダンス境界条件について紹介します。
トランスデューサーの開発においては、インピーダンスカーブをはじめとする特性を予測することが重要です。PZFlexでは素子単体の特性やトランスデューサーの特性、トランスデューサーを水など媒質中に置いたときの負荷下の特性を計算できます。
ところで、従来、媒質の負荷下の解析ではトランスデューサーの周囲に媒質をモデル化する必要がありました。これは、設定できる境界条件が固定境界条件(全反射)、自由境界条件(全反射)、吸収境界条件(無限境界条件、全て通り抜ける)に限られていたためです。この方法では、媒質のモデル化により、トランスデューサー単体の解析に比べ解析規模が数倍に成ることがあります。さらに、空気など、構造材料に比べ音速の遅い媒質である場合、媒質中の波長に合わせて要素サイズを細かくする必要が生じます。これは、要素数だけでなく、タイムステップ数の増大も招きます。そのため、計算時間は無負荷での計算に比べ10倍、20倍と膨らんでしまいます。
PZFlex2016で導入されたインピーダンス境界条件では、境界条件として媒質の音響インピーダンスを指定するだけで、媒質を要素としてモデル内に設定しなくとも媒質の負荷を正しく反映することができます。インピーダンス境界条件を利用することで、トランスデューサー単体モデルと同じモデル、同程度の解析規模で媒質負荷下での特性解析が可能になります。
構造格子上のモデル表面の階段形状をなめらかにするメッシュスムージング、素子微細化に伴う駆動回路の寄生容量の影響を組み入れる電極間回路の実現、液体-固体境界のスリップのモデル化など多くの機能が導入されています。
上記の新機能ほか様々な分野の解析例について紹介する Webセミナーを10月20日に開催いたします。また、各種テーマ(ソナー設計・フィルターデバイス・医療用超音波)に沿った体験セミナーも用意しておりますので、ご興味のある方は参加申込みいただければ幸いです。
圧電・超音波解析ソフトウェア PZFlexの紹介ページはこちら
http://www.engineering-eye.com/PZFLEX/index.html