推進薬タンクの落下衝突解析
ロケットが打上げ直後に指令破壊された場合、人工衛星に搭載されている有害な液体推進薬が漏洩拡散した際の間接的影響についても十分に考慮されている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)殿では検証のために推進薬タンクが落下した場合の模擬実験を行った。ここではこの実験を模擬した数値解析結果と実験結果を比較・検討することで、AUTODYNによる数値解析結果の妥当性を検証した。
実験方法と結果
- JAXA殿による推進薬タンクの落下実験
- 模擬推進薬タンクの構造・条件
- チタン合金(Ti-6Al-4V)製
- 直径420mm、肉厚約1.0mm
- 模擬推進薬として水36ℓ
- ヘリウムガスで約7気圧に加圧
- 約100mの高さから自由落下
- ハイスピードカメラによる可視観察
![]() (提供:JAXA殿) |
![]() (都市再生機構殿) |
解析条件と解析結果
- 対称性を考慮した1/4体系モデル
- タンク殻(青色)
- Shell要素
- チタン合金
- 模擬推進薬(緑色)
- Lagrange要素
- AUTODYN材料ライブラリの水のデータを使用
- ヘリウムガス(水色)
- Lagrange要素
- 理想気体EOS
- 内圧約7気圧
- 落下速度:42m/s
- 地表面の変形は考慮しないものとして、剛境界条件でモデル化
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比較結果
落下模擬実験のタンク破壊状況を観察すると、タンクは落下面がある程度塑性変形した後、タンクの溶接接合部分付近に沿って断裂し、この開口部分から模擬推進薬が噴出している。AUTODYNによる解析ではこの溶接接合部分を考慮していないため、この破壊モードは模擬できなかったが、タンク落下面の塑性変形および破壊規模は十分模擬できたと考えられる。
実験の画像解析の結果、衝突後10msにおける最大噴出速度は120m/s程度であり、60ms時点で最大噴出速度は30m/s程度であった。これはAUTODYNによる解析結果と大きな隔たりがなく、解析結果の妥当性を十分証明するものであった。
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主な参考文献
- 阿部 淳、竹場敦史、中島浩雄、片山雅英(CRC)、鳥井義弘、特手重樹(JAXA)、「推進薬タンクの落下・破壊の数値シミュレーション」, 日本機械学会 第18回計算力学講演会、筑波大学、2005年11月19日(土)~21日(月)