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画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス)東京都市大学 工学部 都市工学科 災害軽減工学研究室 吉川 弘道 教授

第4回:体で感じる動的荷重と静的荷重

1. 動的問題と静的問題とは

耐震設計では、動的荷重と静的荷重の意味するところを理解することが重要である。‘動いている物’=‘加速度が生じているもの’であるので、目で見て、体で感じることが欠かせない。ここでは、手動式の振動応答習得機によって、この2つの荷重を体感いただきたい。
まずは、動的問題と静的問題を整理すると....

  • 動的問題/dynamic problem:荷重や変位が時間的に変化し、慣性力が発生する。
  • 静的問題/static problem:変位の時間的な変化(速度,加速度)がなく、静止している。

2. ラーメン部材による体験(写真1、写真2)

2層ラーメン部材の模型により、動的荷重と静的荷重を説明してみよう(振動応答習得機2号機の登場)。写真1は、頭部に錘(質点)を2個搭載し、基部架台から振動させている。部材の質点に加速度αが作用し、慣性力-mαが生じている(すなわち、動的に応答している)。一方、写真2は、水平荷重を静的に作用し、構造系が釣合っている状態であり、静的問題となる。

ここで、写真1は振動中、写真2では静止状態であるが、両写真の変形がほぼ同一であることを確認されたい。言い換えると、写真2(静止状態)は、写真1(振動中)と同一の変位となるように押した時の状態である。従って、動的荷重/静的荷重の場合ともに、変形、層間変位、断面力(曲げモーメント、せん断力etc.)などが等価となっている。このことは、写真2のような静的荷重が、慣性力である地震荷重に代替できることを示唆するものである。(地震荷重= -mαのように考えればよい)。

テクニカルレポート:Web講座:画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス)写真1 動的荷重(振動中)   テクニカルレポート:Web講座:画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス) 写真2 静的荷重(静止状態)

3. 振動応答習得機を使ってみよう!

振動応答習得機は、東京都市大学吉川研究室にて開発されたが、授業にも活用され、受講学生にはすこぶる好評である(と、教員は信じている)。来室いただければ、存分に、‘揺すり’、‘プッシュする’ことができる。なお、振動応答習得機 1号機、2号機については、動画サイトにもアップしており、興味があれば閲覧されたし。工学系動画サイトSeeing Is Believing:http://www.evo.co.jp/musashi/

4. 余談:‘ラーメン構造’の復習

最後に、部材模型の梁柱接合部を注視されたい。変形後も接合部にて直角が保持されていることがわかる。ラーメン構造の語源は、ドイツ語の‘Rahmen’であり、日本語に直すと‘剛節架構’となる。ラーメン部材は、部材一般部は変形しても、梁と柱の交点(接合部)が剛結していることが重要であり、変形前に直角であれば、変形後も直角である(従って、この剛節接合部が十分に機能していなければ、地震時に損傷した場合、本来の構造性能と耐震性は保証されない)。このようなことも、実際に押したり、揺らしたりして、体で感じることが肝要であろう。


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