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画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス)東京都市大学 工学部 都市工学科 災害軽減工学研究室 吉川 弘道 教授

第5回:「LNGタンクの秘密」

1.最先端技術LNG基地

エネルギー供給施設の最先端テクノロジーとも言うべき液化天然ガス貯槽施設(LNGタンク)の秘密を解き明かしたい。クリーンエネルギーの代名詞ともなっている液化天然ガスLNGは、その使用量が急速に増加し、現在では、火力発電用エネルギーの44%、都市ガスの96%にLNGが使われている(ただし、年度によって流動的である)。
ここでは、大容量貯蔵を可能とする地下式LNGタンク(LNG In-Ground Storage Tanks)について報告したい。先ずは、写真-1に、世界最大級のLNG基地袖ヶ浦工場(東京ガス/東京電力共同基地)を紹介したい。地下式タンクおよび関連施設など、その全景を俯瞰することができる。

2.そもそもLNGって何?

LNGとは、液化天然ガスのオリジナル英語Liquefied Natural Gasの省略形である。液化天然ガスLNGは、気体である天然ガスを-162℃以下に冷却して液体にしたもの。液化によりその体積を気体の約1/600に減少させることができ、輸送・貯蔵が極めて容易となる。LNGは、原料として都市ガスや化学工業に用いられ、燃料として火力発電所、自動車に供せられることはよく知られている。
LNG タンクは、液化基地でのLNG製造と船出しまでの間、および LNG 受入基地における荷揚げ/再ガス化/出荷までの貯蔵、の2地点にて必要であるが、我が国では後者の受入基地が多数建設/稼働していて、世界最大の消費国とも言われている。

テクニカルレポート:Web講座:画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス)写真-1: 世界最大級のLNG基地袖ヶ浦工場
(東京ガス/東京電力共同基地)
  テクニカルレポート:Web講座:画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス) 写真-2: LNGタンクの内部構造

3.地下式LNGタンク

地下式LNGタンク(LNG In-Ground Storage Tanks)は、厚肉円筒形の鉄筋コンクリート製躯体を構築し、円筒内面に断熱材を配し、さらに気密性/液密性を保持するステンレス製のメンブレン(内面膜材)を設置した構造である。これは、地中に構築された巨大円筒魔法瓶とも言える。

ただし、 LNGのハンドリングは容易ではなく、極低温(-162°)に対する耐性があることに加えて、耐凍結(凍害)性、断熱性、漏洩対策、耐震設計など先端技術が駆使される。

写真-2は、地下式LNGタンクの内部からの画像(もちろんLNG貯蔵前の空気環境下の状態)である。これは、内空直径72m、高さ50mの中空円筒であり、その容積は、大略36m×36m×π×50m ≒ 200,000m3 = 20万キロリットルのような計算となる。

側壁/底面ともに、(内側から)メンブレン⇒保冷材⇒鉄筋コンクリートからなる3層複合体構造となっている。さらには、直接LNGと接触するメンブレンは、極低温による温度収縮を吸収するため、コルゲーションと呼ばれる‘ひだ’が設けられていて、この画像では、これが波状の輝きを放っている。

【資料/画像提供:東京ガス(株)】

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