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船舶運航支援システムの構想 安全で効率的な運航のために寄稿 松田 祐哉 氏

2008/07/29

船舶運航をめぐる動き

近年、新興国の経済発展に伴い、資源や製品の輸送需要が急増しています。様々な輸送手段の中でも、船舶による海上輸送は、これらの国際輸送の大部分を担っています。
一方では、原油価格の急激な高騰により、船舶の運航コストが大きく上昇しています。また、地球温暖化防止のために、船舶から排出される温室効果ガスを削減するための動きが国際的にも活発になっています。

これらの状況に対応するためには、船舶の運航効率を向上させる必要があり、ハードとソフトの両面からの対応が求められます。ハード面からは、主として新造船において、燃料消費効率の良い船型や主機(エンジン)の開発が行われてきました。ソフト面からの運航の効率向上に関しては、さらなる改善の余地があると考えられます。

また、船舶の安全性に対しても、大型の新造タンカーについてのダブルハル(二重船殻)構造の義務化、CSR(Common Structure Rule)などの国際共通規則の策定など、事故の発生リスクを減少させ、かつ、万一事故が発生した際でも、環境に与える悪影響を最小化するための動きも続いています。

しかし、運航においては、悪天候下での経験不足や状況判断の誤りに起因する海難事故も発生しています。
船舶運航の安全性の面においても、システム化がますます重要となって来ていると考えられます。

Sea-Navi® システム※1

このような状況へのソフト面からの対応として、ユニバーサル造船株式会社および弊社は、船舶の効率的かつ安全な運航を支援するためのシステムSea-Navi®を構想し、プロトタイプシステムを作成いたしました。

Sea-Navi® システムは、予報された海気象情報のもとでの、船体および主機の特性モデルに基づく船舶航行時の挙動を推定し、効率的かつ安全な運航航路を推奨します。また、実際の運航において遭遇した海象データにもとづき、船体の構造疲労についての寿命予測を行い、適切な検査・保守計画の立案を支援します。
また、実際の運航において遭遇した海象データにもとづき、船体の構造疲労についての寿命予測を行い、適切な検査・保守計画の立案を支援します。

※1 Sea-Navi はユニバーサル造船株式会社の登録商標です。

船舶運航支援システムの開発 図1 Sea-Navi®システム概要構成図

Sea-Navi® は船上システムと陸上システムから構成され、両者は、衛星通信経由でデータをやりとりします。

船上システムは、陸上システムから気象予報データを受信し、この気象データをもとに、荒天回避を考慮しつつ、最小燃費航路/最短時間航路/船長任意指定航路等の推奨航路を探索します。船長は、これらの気象予報データおよび推奨航路を参考に、総合的な判断を行って、運航コースを選定することができます。また、システムの保守管理機能(疲労寿命予測結果)に基づき、検査・保守のタイミングを検討することができます。

陸上システムは、海気象予報配信サーバーから配信された海気象予報データを船上システムに受け渡すとともに、主機や船体運動等のモニタリングデータを船上システムから受信します。また、船上システムと同様に、推奨航路探索機能および保守管理機能も持っているので、種々の分析を行って、運航中の船のサポートに役立てることができます。

船舶運航支援システムの開発 図2 海気象データおよび推奨航路探索結果表示画面

期待効果

推奨航路探索機能においては、北太平洋航路を運航するコンテナ船においての試計算では、最小燃費航路において5%~8%程度の燃料削減効果が得られています。
保守管理機能においては、より適切なタイミングでの検査/保守が行えるようになり、安全性を保ちつつ保守費用を削減する効果が期待されます。

今後

今後は、Sea-Navi® システムを種々の船種に搭載し、実運航での試用を通じてシステムの性能・効果を検証し、機能向上と実用化をはかってゆく予定です。


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