SUS308におけるM23C6のTTP曲線

ステンレス鋼SUS308におけるM23C6のTTP（Time-Temperature-Precipitation）曲線を計算した事例です。析出モジュールTC-PRISMAを使用して、各温度においてM23C6の析出が開始する時間を予測しています。この結果はVitekらによる実験値のプロットとよく一致しています（白抜きはオーステナイト、塗りつぶしはオーステナイト+M23C6）。

SUS308におけるTTP曲線

J. M. Vitek et al., “The aging behavior of homogenized type 308 and 308CRE stainless steel”, Mater. Trans. A, 18 (1987) 1195-1201

718合金におけるγ'相とγ"相の析出

ニッケル基合金の718合金における、析出強化に寄与するγ'相（L12）とγ"相（D022）の両方が析出・粗大化する過程を計算した事例です。析出モジュールTC-PRISMAを使用して各相の平均粒径の時間変化を予測しています。718合金（Ni-18.37Cr-10.86Fe-2.91Mo-1.0Al-0.45Ti-6.0Nb wt%）はガスタービンなどの高温用途に最適な材料で、高温強度と良好な加工特性を持つ時効硬化型の合金です。計算設定として、各相の析出形状や変態ひずみを計算に考慮しています。γ' 相についてはcubic、γ"相についてはplate形状とし、変態ひずみはユーザデータを入力しています。時効処理条件として、等温処理としています。

各温度におけるγ'相の平均半径の時間依存性
計算にはTCNI10、MOBNI5データベースを使用

各温度におけるγ"相の平均長径の時間依存性
計算にはTCNI10、MOBNI5データベースを使用

1023 Kにおけるγ'相及びγ"相の体積分率の時間依存性
計算にはTCNI10、MOBNI5データベースを使用

• Han, Ya-fang, P. Deb, and M. C. Chaturvedi. "Coarsening behaviour of γ ″-and γ′-particles in Inconel alloy 718." Metal Science 16.12 (1982): 555-562.
• Sundararaman, M., P. Mukhopadhyay, and Surjo Banerjee. "Some aspects of the precipitation of metastable intermetallic phases in INCONEL 718." Metallurgical Transactions A 23.7 (1992): 2015-2028.
• Devaux, Alexandre, et al. "Gamma double prime precipitation kinetic in Alloy 718." Materials Science and Engineering: A 486.1-2 (2008): 117-122.
• K. Wu, Q. Chen, P. Mason, Simulation of Precipitation Kinetics with Non-Spherical Particles, J. Phase Equilibria Diffus., 39(2018)571–583

6000系アルミニウム合金におけるβ''相の析出

AA6005合金中の（Al）マトリックス中のβ"相の析出を計算した事例です。析出モジュールTC-PRISMAを使用して数密度、平均粒径の時間変化を予測しています。計算条件・時効処理条件として、185℃の等温保持で、析出物の形状として球状を仮定したものと、針状を考慮したもの両者の結果を比較しています。母相の組成は溶体化処理温度530℃における平衡組成を仮定しています。

β"析出相の平均粒径の時間依存性
計算にはTCAL7、MOBAL6データベースを使用

β"析出相の数密度の時間依存性
計算にはTCAL7、MOBAL6データベースを使用

Myhar et al., “Modelling of the age hardening behaviour of Al–Mg–Si alloys”, Acta Materialia 49(2001) 65-75

Al-Mg-Zn合金におけるη'相の析出

7000系アルミニウム合金の主成分である、Al-Mg-Zn合金におけるη'相の析出を計算した事例です。析出モジュールTC-PRISMAを使用して平均粒径の時間変化を予測し、Deschampsらによる実験値（プロット）と比較しています。

η'析出相の平均粒径の時間依存性
計算にはTCAL7、MOBAL6データベースを使用

Deschamps, A., and Y. Brechet. "Influence of predeformation and ageing of an Al–Zn–Mg alloy—II. Modeling of precipitation kinetics and yield stress." Acta Materialia 47.1 (1998): 293-305.

Cu-Co-Fe合金におけるCo-Feの析出

Cu-0.68Co-1.52Fe（at%）の時効処理プロセスを計算した事例です。析出モジュールTC-PRISMAを使用して数密度、平均粒径の時間変化を予測しています。時効処理条件として、873、923、973Kの熱処理をそれぞれ設定し、計算しています。析出物は熱処理時間とともに大きく成長し、析出物の数密度は、粗大化が起こると同時に、小さな粒は食われるか、消失するため、熱処理時間の増加とともに平均粒径は減少します。このように、温度条件によって熱処理時間に伴って変化する析出物の粒径の変化や、密度の変化などを予測することが出来ます。

各熱処理温度に対する粒径の変化　各処理温度に対する密度の変化
計算にはTCCU3、MOBCU3データベースを使用

Watanabe, Daizen, Chihiro Watanabe, and Ryoichi Monzen. "Determination of the interface energies of spherical, cuboidal and octahedral face-centered cubic precipitates in Cu–Co, Cu–Co–Fe and Cu–Fe alloys." Acta materialia 57.6 (2009): 1899-1911.

(NiCoFeCr)94Ti2Al4合金におけるL12相の析出

高エントロピー合金(NiCoFeCr)94Ti2Al4におけるL12相の析出を予測した事例です。母相FCC相からのL12相の析出を析出モジュールTC-PRISMAを使用して予測しています。計算結果はZhaoらによる実験データ（プロット）とよく一致しています。

各温度におけるL12相の平均半径の時間依存性

各温度におけるL12相の数密度の時間依存性

Zhao, Y. Y., et al. "Thermal stability and coarsening of coherent particles in a precipitation-hardened (NiCoFeCr) 94Ti2Al4 high-entropy alloy." Acta Materialia 147 (2018): 184-194.