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コラム:
イベントセミナー開催報告

ソフトウェアによる材料・プロセス設計ウェビナー

CAEソリューション営業部 小林 弘明
材料・技術工学部 山崎 敏広

[2020/12/22]

金属材料は、世の中に50種類以上が存在し、それぞれの金属材料の持つすぐれた特性を、用途や目的に合わせた応用がなされ、私たちの身近な製品から社会を支える基盤として、なくてはならない材料としてとして用いられています。

このように我々の生活を支える金属材料の研究開発に携わる方々へ、CTCでは長年に渡りナノスケール解析から熱力学平衡計算、析出粒成長、拡散律速計算、組織予測計算などを通したソフトウェアやサービスの提供を行っておりますが、それぞれの技術分野の各合金系への適用に悩まれる研究者の方々と多く接してきた経験を踏まえ、今期より、合金分野ごとに汎用的なソフトウェアを用いた計算適用例紹介の場をウェビナー形式で実施することといたしました。

図

ウェビナーは、今年7月から月1度のペースで開催され、既に鉄鋼、アルミ合金、銅合金、ニッケル超合金、チタン合金、マグネシウム合金、高エントロピー合金に向けた内容を実施いたしました。多数の皆様にご参加いただき、有難うございました。

本コラムでは、最近実施したウェビナー:“Ti/Mg合金(軽金属), 最適合金設計・熱処理プロセスへの熱力学計算ソフトの活用”より、チタン合金向けのThermo-Calc適用事例をご紹介させていただきます。
一般的に、チタン合金の特性として「軽くて強い」、つまり比強度が高いということが挙げられます。チタンの比重は4.5で、鉄の7.8よりも小さく、また強度に関しても普通鋼やアルミよりも2~3倍程度大きいと言われています。このような背景から、チタン(チタン合金)は近年急速に実用化が進んでおり、身近なところではテニスラケットやゴルフクラブ、自動車(某ラリーカーの市販車のターボチャージャー)、航空機(ボーイング787のエンジン部品)に使用されています。また、生体適合性(人体に害を与えない)にも優れており、インプラントや人工骨にも用いられています。

チタン合金が産業で活躍する素材となった背景には、チタン合金が優れた特性を持っているということと、チタン合金の材料組織を制御し、最適な機械特性(強度)や加工性を設計できるようになったためです。チタン合金は材料組織の観点より、主に3つの種類に分けることができます。

  1. α型合金(HCP構造のα相で構成)
  2. β型合金(BCC構造のβ相で構成)
  3. α+β型合金(α相とβ相の二相で構成)

(細分化すると、ニアα, ニアβも加わり、5つの種類になります)

チタン合金内部にそれぞれ固有の結晶構造を有しており、結晶構造が異なると、当然ですがそれぞれの合金系が持つ特徴も異なります。α型合金は強度に優れるものの加工性に劣り、β型合金は加工性に優れ、種々の形状に加工できますが強度に劣ります。チタン合金ではα相とβ相のバランスが非常に重要で、用途に応じてα相とβ相の量比や粒径など、組織を制御する必要があります。この組織の制御するための手法として、チタン合金への添加元素の選択とプロセス処理(加工や熱処理)が挙げられます。

前置きが長くなってしまいましたが、ウェビナーでは、チタン合金の代表Ti-6Al-4V(α+β型)について、β固溶体相から冷却速度に応じてα相の体積分率がどのように変化するかを評価した事例を紹介させていただきました。
図1に、Thermo-Calcを用いて1000℃のβ単相域の状態から600℃まで冷却した際に、プロセス処理(冷却条件)によってα相とβ相のバランスがどのように変化するかを予測した計算結果を示します。横軸がα相分率で、縦軸が温度です。赤い線は平衡計算、青線は冷却速度が1℃/sで、水色、茶色、緑色になるにつれ、冷却速度が速い条件となります。冷却速度が速いほど最終的に残存するα相分率は減少します。このように、β単相域から焼入れた際に、所望とするα/β量比を得るために最適な冷却条件を評価・予測することができます。今回はご紹介しませんが、チタン合金への添加元素の選択という観点では、添加元素がα相安定型またはβ相安定型か、安定領域への寄与、変態温度の変化など、材料設計上重要となる情報を計算で予測することができます。

図1 Ti64の凝固過程において、冷却速度に応じたα/β相分率の変化予測

図1 Ti64の凝固過程において、冷却速度に応じたα/β相分率の変化予測

CTCでは、Thermo-Calcを熱力学計算で材料組織を予測する使用方法にとどめず、最適な合金組成、最適な熱処理プロセスなど、材料設計の中核を担う計算ツールとして活用いただけるよう皆様をサポートいたします。

関連製品に関するご案内

熱力学計算ソフトThermo-Calc
http://www.engineering-eye.com/THERMOCALC/

フェーズフィールド法計算ソフトMICRESS
http://www.engineering-eye.com/MICRESS/