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コラム:熱流体

熱快適性解析における人体のモデル化

材料・工学技術部 応用技術第2課 小山 敦久

[2020/06/23]

自動車分野を中心に空調開発の効率化のため、シミュレーションを活用した人の温冷感、熱快適性の検討が進められています。こういった検討では人の代謝や血液循環、発汗、震えといった体温調節系を考慮するために、それらを模擬する数値サーマルマネキン(熱マネキン)を使用したシミュレーションが有効な手段の1つです。

良く知られている熱マネキンモデルの1つとしてFialaモデルがあります。Fialaモデルは平均的な人間の体温調節系を表現するモデルであり、図1に示すように人体を円筒形と球形の要素で近似してモデル化しています。FialaモデルではPassive Systemとして分類される熱伝導や代謝発熱、血液循環、呼吸、蒸散、着衣を考慮した体内、体表面での伝熱がモデル化され、身体組成(体重や体脂肪率)に応じた計算が行われます。それに加えActive Systemとして分類される発汗や震え、血管収縮・拡張といった中枢神経系の熱調節反応もモデル化されており、シミュレーションで人体のトータルな体温調節系を模擬することが可能です。

図1 Fiala(FIALA-FE)モデル

図1 Fiala(FIALA-FE)モデル

Fialaモデルをはじめ、平均的な人間の体温調節系を表現するモデルが広く知られる一方で、体脂肪率などの身体組成が人間の体温調節系に大きな影響を与えることも広く認識されています。そこで、ある限られた集団に対する予測精度向上のため、特定の人種や性別の平均的な身体組成を反映したモデルの研究、活用も進められています。

伝熱・熱快適解析ソフトウェアTHESEUS-FEはFialaモデルを有限要素法ベースに修正したFIALA-FEモデルに加え、最新のバージョン8ではFialaモデルの身体組成を変更したヨーロッパ男性、ヨーロッパ女性、アジア男性のモデルを文献に基づいて実装しています。

図2にヨーロッパ男性、ヨーロッパ女性、アジア男性のモデルを使用した単純な熱快適性解析の例を示します。左に示す解析モデルにおいて雰囲気と壁面温度を28℃、48℃(高温環境)、28℃、8℃(低温環境)、28℃と変化させた場合、各熱マネキンの熱快適性は右のようになり、人種・性別により差異が生じていることが確認できます。

図2 人種・性別の異なる熱マネキンによる熱快適性解析の例

図2 人種・性別の異なる熱マネキンによる熱快適性解析の例

もちろん熱マネキンはこのような単純な解析モデルだけでなく、現実的な車室内の解析でも使用可能ですので、必要に応じて活用することで温冷感、熱快適性の予測精度向上が期待できます。

CTCでは上記のような検討を円滑に進めて頂けるようソフトウェアの技術的なサポートも提供しています。

関連製品についてはこちら

伝熱・熱快適性・自動車塗装解析ソフトウェア THESEUS-FE
http://www.engineering-eye.com/THESEUS-FE/