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株式会社オリエンタルコンサルタンツ 様道路交通騒音・振動問題への取り組み
-低周波音対策解析シミュレーションとその適用性-

お話を伺った方

 東京事業本部
プロジェクトディレクター(構造): 大竹省吾 様(写真右)
技師: 井上陽介 様 (写真中央)
技師: 辻一将 様 (写真左)


(株)オリエンタルコンサルタンツは、建設にあたって不可欠な調査・測量・計画・設計や新技術・新工法当の研究・開発、さらに施工管理、施工後の維持管理・診断など、一貫した業務を幅広く実施する総合コンサルタンツである。社会資本を整備するという「国土建設」からストックの有効活用や自然環境の保全等を含めた総合的な「国土マネジメント」への転換が求められている社会環境変化を背景に、1957年12月の創業以来、半世紀弱に亘り蓄積してきた知恵を組織的に終結・共有するナレッジマネジメントを駆使し、従来の建設分野の枠を超えた社会環境全般に関わる知的サービスを総合的に提供している。

「造る」から「創る」へと発想を転換し、社会基盤整備のパートナーとして常に新しい提案を続けている。

地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、熱帯雨林破壊など、地球規模の環境問題が顕在化しているなか、より身近な問題として、周辺の社会環境、生活環境、自然環境等の地域環境問題も深刻化しています。自動車等による大気汚染や騒音、生活排水による水質汚濁、開発行為に伴う自然破壊などは、私たちの日常生活と直接的に関わる問題です。

今回インタビューでは、道路交通の環境問題に関して、その問題のスペシャリスト集団である(株)オリエンタルコンサルタンツ 東京事業本部様にお聞きします。同部署では、騒音・振動に関する調査、評価、対策検討・設計、解析検討等、一貫したコンサルティングで、名古屋高速道路都心環状線環境対策において、(社)日本騒音制御工学会より 「環境デザイン賞」を受賞するなど、経験・実績が多数あります。

その解析検討のシステム化で、CRCの【車輌走行シミュレーションシステム DYNAVC】をご利用いただいています。このインタビューでは、道路交通環境問題のなかの「低周波音対策」に焦点をあてて、数値解析シミュレーションの適用性、手法、課題まで含めてお伺いいたしました。

耐震・振動問題の技術エキスパート

道路交通に関する騒音問題には、発生源により様々な構成要素があります。これらの予測、対策は、設計と連動することで、初期段階での問題解決が可能です。弊社では、10年くらい前から基幹となる研究開発に携わってきました。

この東京事業本部は、大きく分けて「構造・景観」、「都市・地域」、「環境・文化」、「交通」4つのグループがあります。私たちは、「構造・景観」グループに属しています。この「構造・景観」グループでは、構造設計が主な業務となります。耐震・振動解析のうち橋梁やトンネルの耐震解析などは、ほぼ自社内で処理しています。その中のツールのひとつがDYNA2Eです。DYNA2Eの導入は10年以上前になります。事例の無いような特殊な解析については、CRCさんのアウトソーシングサービスを利用することもあります。

弊社では、先ほどの4つのグループの人間がチームを作って仕事をしています。例えば、道路交通の環境問題では、騒音や振動の調査の後に構造的な対策を行うので、環境グループと構造グループが一緒になってプロジェクトを進めます。

私たちが専門としている耐震・振動分野では、橋梁などの交通振動問題を扱います。この交通振動問題は、弊社が従来から行ってきた構造設計を主軸として見た場合、特殊な業務になります。解析検討でも通常の耐震解析ではあまり用いない特殊な機能が必要となります。自社内で保有する耐震解析ツールの中でも、周波数応答解析ができるという点で、DYNA2Eを交通振動問題へ適用しています。

低周波音対策を考案し、実現した事例

交通振動のひとつの事例として、名古屋高速道路の低周波音問題がありました。橋梁の基礎から地盤を介して伝わってくる振動と違って、「低周波音」は橋桁が揺れることによって生じる、低周波空気振動で家屋の窓を揺らしたりする現象です。

道路交通騒音・振動問題への取り組み-低周波音対策解析シミュレーションとその適用性- 資料提供:(株)オリエンタルコンサルタンツ様

この事例では、対策としてTMD(Tuned Mass Damper)を設置し低減効果を得ました。TMDによる対策というのは、橋梁のスパン中央などに、バネとおもりとダンパーで構成されるTMDをつけるものです。TMDを揺らすことで橋梁のゆれを抑えることができます。

道路交通騒音・振動問題への取り組み-低周波音対策解析シミュレーションとその適用性- 資料提供:(株)オリエンタルコンサルタンツ様

このTMDはもともとよく使われているのが、ビルの揺れとか吊橋の揺れなどです。風などにより構造そのもの自体の周期で揺れる比較的定常的な揺れが対象です。交通振動というのは、色々な車が不規則に通ることによって生じる非定常な現象なので、効果がみられないと思われていたようです。弊社は、それを「使ってみては・・」ということで検討してみました。揺れが全く無くなるわけではありませんが、うまく用いることで効果が見られたということです。TMD自体は別に新しいものではないです。ただ使い方を工夫したということです。本格的な実施は弊社が初めてだと思います。このTMDに関する一連の検討は、(社)日本騒音制御工学会より「環境デザイン賞」をいただいています。この低周波音対策は、おかげさまで他からもを多数引き合いをいただいており、実績を重ねております。

パラメータスタディを繰り返す交通振動の解析シミュレーション

この交通振動のシミュレーション解析では、まず始めに、振動の実態を現地で計測します。次にこれを試行錯誤の上で解析モデルで再現します。できあがった解析モデルに対して、対策工を設置し対策効果を予測します。途中段階で現地にて試験施工を行うこともありました。この結果を解析モデルに反映させれば、最終的な対策効果の予測精度が上がります。 解析モデルの作成では、部材の結合条件、材料剛性、質量を適切に評価することがポイントとなります。路面の凹凸や走行車両の特性によっても応答が変わります。対策後、色々な車が走ります。どのくらい振動が落ちるか、安定して落ちるのか・・・、ぴたりと当てられますとは言えませんが、概ね予測ができています。もちろん、本施工した後にあらためて計測し、対策効果を確認しています。対策工の設計は、問題を解決するための定量的な目標値を定めて行うので、シミュレーション解析は必要不可欠なツールとなっています。

車両のモデル化は難しいです。交通振動は大型車が問題になります。下から覗いてみると分かると思いますが、結構複雑です。サスペンションの硬さは計り方によっても違うようです。橋梁のモデル化にも工夫が必要です。床版の剛性、アスファルトの舗装の扱い方など・・・。低周波音以外の問題も扱っています。扱う問題に応じて、モデル化の工夫を行っています。実績もありますので・・・、どのパラメータに着目すべきかというノウハウを持っているつもりです。

道路交通騒音・振動問題への取り組み-低周波音対策解析シミュレーションとその適用性-
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  道路交通騒音・振動問題への取り組み-低周波音対策解析シミュレーションとその適用性-
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より高度な解析シミュレーションへ。発生源の究明、対策にむけて。

今までご説明した低周波音対策は、橋梁の桁の揺れに対する対策です。解析で追えますし、対策自体もなんとかなっています。ある程度実績を踏めば、橋梁の周期だけを計測してTMDを付けてしまう事になるのかも知れません。

よく分からないのが、ジョイントのところです。ここからも低周波音が出ています。騒音もでています。また、橋脚を揺すって、家を揺すっています。これは対策が難しい。最も有効なのは、ジョイントをなくしてしまうということです。地盤振動対策として実施されている例としては、橋脚の脇に壁を作る、空洞をつくるという対策があります。騒音・振動を含め他に対策できないか考えています。

ジョイント部の騒音に着目して、どのような特性があるのか、どのような対策の可能性があるかということを解析検討したことがあります。ジョイント部の振動によりどこの部分が揺れているのか、どこの部分を揺れ難くすれば騒音が低下するかという検討です。また、橋脚を介して地盤に伝わる揺れに関する検討も行っています。地盤側での対策は非常に難しいのですが、簡単な対策で効果がみられた事例もあります。

今後は、シミュレーション解析を、専門家だけにお見せするのではなく、周辺住民の方々への説明用にお見せするケースが増えてくると思います。このため動画などの可視化技術の整備を進めています。一般の方々にもわかりやすい形で、「車が通るとこんなに揺れていた橋に対策を行うと、これだけ揺れ方が減りますよ」といった内容を説明するものです。解析モデルはある程度簡易化しますから、実際の形状と違ったものになります。現状のソフトウェアだとなかなか実際の形状を表現できません。このため、説明資料としてはわかり難いものになってしまいます。解析モデルの結果を実際の形状にもどして見られるようにできればいいと思います。解析ソフトウェアと連動したものをCRCさんにはお願いしたいですね。

インタビューを終えて │ 後 記 │Editor's notes
道路交通の振動・騒音の予測、解析、橋梁の設計に関して常に業界をリードする(株)オリエンタルコンサルタンツ様の取り組みがよくわかる内容のインタビューでした。CRCとしても、今後も解析ツールの整備、高度な技術内容を含むアウトソーシングサービスの質で応えさせていただきたいと思います。
最後に大竹様、井上様、辻様には、貴重な時間を頂戴いたし、誠に有難うございました。(聞き手:CRC澤田・村中)

名称 株式会社オリエンタルコンサルタンツ
(株)オリエンタルコンサルタンツ
http://www.oriconsul.co.jp/

本社所在地 東京都渋谷区南平台町16番28号グラスシティ渋谷
創業 1957年(昭和32年)12月24日
社長 廣谷 彰彦
資本金 500,950千円
年商 144億6,924万円(平成14年9月期)
社員数 740名(平成15年12月現在)
主な事業概要 共施設等の社会基盤整備事業およびこれに関連する事業の企画・調査・測量・計画・設計・管理・ならびに評価・診断・提案・指導。
前号に関する新技術・新システムの研究および開発。 情報処理システムならびに企業経営分野の人材育成のための教育事業に関するシステムの開発。
土木・建築・造園・農業土木等の工事に関する施工管理および請負。
不動産の活用・管理・運営。 前各号に付帯する一切の事業およびこれを助成する事業。