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コラム:再生可能エネルギー

2050年カーボンニュートラル達成に
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は必要不可欠

エネルギービジネス部 エネルギー営業第2課 立川 有佳

[2024/03/29]

2050年カーボンニュートラル達成に向けて脱炭素の取り組みが進んでいます。
再生可能エネルギーの活用、省エネなどでCO2排出量削減が推進されていますが、鉄鋼業・石油化学業など、どうしてもCO2を0(ゼロ)にすることが難しい分野があります。
そこで、カーボンニュートラル達成に必要とされる技術がCCSです。言葉の通り、排出されたCO2を集めて地中に埋める技術です。以下の図の通りCCSではCO2が排出源から回収され、貯留されます。

CCSは現代社会を支える鉄鋼業・石油化学業などを始めとする製造業のカーボンニュートラル達成のために重要な技術となります。

政府目標は2030年CCS事業本格展開

2023年日本のCCS事業に大きな動きがありました。
7つの事業が経産省の外郭団体であるJOGMECの支援を受けて検討を開始したのです。JOGMECはこの7つの事業を先進的CCS事業として選定しました。
※先進的CCS事業の一覧は下記の図の通りです。
その背景には、2023年に策定されたCCS長期ロードマップにおいて、2030年本格展開に向けて、政府が積極的な投資を行うことを決めたことが関係しています。
先進的CCS事業には石油開発会社、総合商社、電力会社などが積極的に取り組んでいます。

令和5年度 先進的CCS事業として選定した7案件の位置図および提案企業

令和5年度 先進的CCS事業として選定した7案件の位置図および提案企業
画像引用元:https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_01_00034.html

CCSに必要な技術 について

CCSのプロセスは大きく回収・輸送・貯留の3つに分けられます。この3つのプロセスについて必要な技術をご紹介します。

回収

CO2の回収技術としてはアミン吸着法と呼ばれるアミン化合物による化学的な回収方法が主に検討されています。
他にも専用の吸着剤を用いた物理吸着法や特殊な膜を使いCO2を回収する膜分離法、なども検討されています。
CO2の分離回収には大きなコストがかかり、CCS推進の際にはコストの低減が求められています。上記に上げた回収技術のうち、膜分離法は化学吸収法と比較して小さな設備で実現できます。コストを低減できる可能性があるため、研究開発が期待されています。

輸送

CO2の輸送方法としては、パイプライン、陸路、船などが考えられています。
どの方法も一般的な輸送方法ではありますが、大量のCO2を運ぶことは新しい試みのため、今までにない知見が求められています。
例えば、CO2は大気圧下において気体から液体を経ずに固体になる性質を持っています。
つまり、圧力をかけて液体にしても容易に気体にも固体にも変化してしまいます。そのため、運びやすい液体としたCO2の輸送には石油や天然ガスなどの輸送と異なるオペレーションが求められます。
CTCでは輸送船でのパイプラインにおける流体解析を実施しました。大量のCO2を輸送する事ははじめての試みですので、こうした事前のシミュレーションが実現場のオペレーションの役に立っています。

貯留

CO2を貯留するには様々なプロセスがあります。貯留先の選定・調査、地面の掘削、CO2の圧入、圧入後のモニタリングなどです。これらは、石油や天然ガスなど資源開発の技術と類似点が多く応用できます。
CTCでは資源開発のソリューションとして、Landmark-Halliburtonのソフトウェアを古くから提供しております。CCS向けにもLandmark-Halliburton始めとしたソリューションを提供しております。
また、地震国である日本においては圧入後の長期安定性の評価も重要になります。こうした地下の力学的変動評価をジオメカニクスと呼びます。ジオメカニクスでは地中の岩盤での力学的な状態や破壊を評価します。CTCが提供しているITASCA社のFLAC3Dは岩盤の大規模変動の評価に使用されています。

最後に

日本におけるCCSの取組み状況と必要な技術について簡単に紹介させていただきました。
石油技術協会のCCS委員会の委員長でいらっしゃる、秋田大学の長縄先生とCTCの社員が座談会を実施いたしました。
座談会ではCCSに関係する技術について深いお話をしていただきましたので、ぜひご一読いただけますと幸いです。

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── 社会課題の解決を目指す科学システム本部の取り組み
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