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コラム:マテリアルデザイン

材料設計コンセプトの活用

材料・CAEビジネス推進部 瀬川 正仁

[2024/02/29]

合金設計の際には、最適解を見つけるためにトレードオフの関係にある特性を考慮する必要が多くあります。合金組成や温度などの複数の変数の関係を示すクロスプロットでこのような情報を整理することができます。熱力学計算ソフトウェアThermo-Calcのプロパティモデル計算のグリッド計算タイプでは、2変数の関数として2つの特性に関するプロットを簡単に作成することができます。以下はMnとCrの組成を変えた場合に駆動力と界面エネルギーがそれぞれどのような値を取るのか整理したものです。例えば、化合物相の駆動力と粗大化速度を描画して、どの範囲の組成であれば駆動力が高く析出しやすくかつ粗大化係数が小さく微細にできるかを評価するなど、このプロットは他の多くの材料系や特性にも適用できます。クロスプロットの他にも、ばらつきを考慮するためにヒストグラムを利用することも可能です。さらに多種のパラメータを同時に最適化するためには、プロセス-構造-特性の関係を整理することも有効な手法です。

(左)駆動力と界面エネルギーのクロスプロット (右)密度のヒストグラム

(左)駆動力と界面エネルギーのクロスプロット (右)密度のヒストグラム

材料開発のための設計手法として、製造プロセス、材料組織、材料特性の関係の活用が促進されています。このコンセプト1)では、強度、耐食性、コストなどの材料特性を決定した後に、これらの特性と関連する項目をもとにプロセス-組織-特性の材料チャートを作成します。このチャートにより、所望の特性を達成するための帰納的な目標を立てることができます。チャートの作成には、その材料固有の要素やプロセスで生じる現象を支配する要因をよく理解する必要がありますが、このコンセプトは特定の用途に最適な微細組織設計、加工パラメータ、および特性目標を特定するのに役立つものとなります。チャートの関係は、文献に存在するモデルや、CALPHADベースのツールの計算で記述できるものが多くあります。例えば、降伏強度に影響を与えるパラメータに析出物の粒度分布がありますが、これは合金組成と熱処理条件があれば、Thermo-Calcで計算できます。また、チャート中で互いに関連付けが可能なモデルや計算があり、Property Model CalculatorまたはTC-Python SDKなどにより、連結、対応付けができます。

このような材料開発手法に関連して、新規材料の設計サービスを提供するQuesTek Japanより、クラウド型材料開発プラットフォームICMD (Integrated Computational Materials Design)の提供が開始されました。材料モデルとプロセス最適化や特性評価ツールがパッケージ化されており、最小限のデータで要求性能を満たす材料開発の期間短縮を実現します。

ICMDのブラウザ上での使用イメージ

ICMDのブラウザ上での使用イメージ

1) Olson, G. B. (1997). Computational Design of Hierarchically Structured Materials. Science, 277(5330), 1237–1242.

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