コラム:再生可能エネルギー
科学システム本部 エネルギービジネス推進部 岩堀 繁人
[2022/07/28]
最近、CMなどで見る機会の増えた風力発電所ですが、立地しているエリアの風を原資に発電し、売電することで売り上げを計上しています。この事業計画上の売上見込、つまり、どういった強さの風が吹くのか(=発電量評価)、というのは、風況観測塔を用いた風況調査を実施することで見積もられます。また、当該エリアの風条件(乱流強度や極地風など)による構造物・構造部材への20年間の蓄積疲労や応力を耐え忍ぶような風車および支持構造物を設計しなければ、公衆安全を担保する設備にはなりえませんので、設計根拠となる風条件に関しては、電気事業法に基づく工事計画届出などの許認可取得に至る一連の経過の中で、厳密に審議がなされます。特に、風技解釈(※)に示された方法に依らないものや、型式認証の設計条件を逸脱する設備については、審査に高度な知識が必要な特殊設備とし、それら特殊設備に該当する発電用風力設備を含む工事計画届出においては、専門家会議を行うものとしています(下図参照)。近年、この専門家会議の事前確認に「ウインドファーム認証」を活用し、専門家会議の審査の効率化を図っている事例が増えてきました。
図 工事計画における技術基準適合性の審査プロセス
(出典:令和3年9月21日 経済産業省「洋上風力発電設備の導入促進に向けた電気事業法等の審査について」より)
ウインドファーム認証はサイト条件評価、風車(RNA)設計評価、支持構造物評価というモジュールで構成され、風車(RNA)設計評価、支持構造物評価の前提となるのがサイト条件評価(=陸上では風条件の評価)となります。このサイト条件評価の根拠データが冒頭に記載した風況観測塔を用いた風況調査結果となるわけです。第三者による認証を得るわけですから、一年間以上の観測を実施することや、計画している風車のハブ高さの3分の2以上の高度で観測をすることなど、様々な要件が付帯しています。
先に述べた専門家会議の審査効率化を図るためのウインドファーム認証取得ニーズの拡大、ならびに、大型化する近年の風車(陸上4MWクラスでハブ高90m、洋上10MWクラスでハブ高140mにもなります)といった背景を受け、2021初頭頃から、より高い高度での風況観測ニーズが昂騰する状態となりました。こうした環境を受け、弊課で開始したサービスが、ドップラーライダーによる風況観測サービスです。
ドップラーライダーとは、リモートセンシング技術を用いた風況観測装置であり、高層風況の観測を行えることや、設置が容易である(風況観測塔に比べ、地面の面積が小さくて済む)などの利点があります。弊課では、Vaisala社のWindcubeを用いています。気象モデルのLOCALSを用いた発電量解析を技術的根幹とする弊課では、以下のサービスを提供しています。
図 LIDARの設置完了景
※「発電用風力設備の技術基準の解釈」を指す。