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コラム:機構・切削

EHDベアリングと機構・構造解析

アプリケーションサービス部 CAEサービス1課 坂井 哲也

[2020/03/18]

弊社が取り扱う機構・構造連成解析ソフトウェア DAFUL の最新版 Ver. 2019 R3において、すべり軸受けに適用可能なEHDベアリング機能が新たに導入されました。本稿ではこのEHDベアリングに焦点をあてて話を展開したいと思います。

EHD(Elasto Hydoro Dynamic)、すなわち弾性流体ダイナミックは、機械部品間の摩擦面を油膜による潤滑によって分離、保護する挙動を解き明かす技術です。EHD理論は、エンジンピストン部のコンロッド端に見るような回転軸に対し垂直方向の荷重を受けるすべり軸受けの一種であるJournal Bearingが代表的適用分野です。これらのすべり軸受けにおいては、軸-軸受け間に満たされた潤滑油による油圧により、すべり運動と外荷重による摩擦、摩耗から守られています。その油膜圧の挙動は、レイノルズ方程式で表されることがよく知られています。レイノルズ方程式は、相対運動する2壁面間の流体がその粘性により壁面に引きずられ、相対速度が速いほど、また壁面間距離に変化がある場合は狭くなるところで流体圧力が高まる現象をそのつり合いから記述しています。一方EHD理論は、レイノルズ方程式が両壁面を剛体とし、流体の粘性を一定と仮定されている点を、壁面を弾性体、流体の粘性は圧力に依存するとして、より実際の条件に適合するように考慮された理論です。

ここからはDAFUL ver.2019R3のNVH解析ツールキットDrivetrainに導入されたEHDベアリングについてお伝えします。ここにDAFULのEHDベアリング解析例を示します。対象構造はすべり軸受けを模擬したFig.1に示す二重円筒であり、両円筒をメッシュ分割した弾性体としてモデル化した上、内側円筒の中心は外側中空円筒の中心から僅かに偏心させて、両円筒間の隙間は不均一となるようにしています。この対象構造に対して外側中空円筒を固定、内側円筒の中心に回転ジョイントを設け、1秒間に1,000rpmから3,000rpmに変化する回転速度を設定します。EHDに関わる条件設定としては、すべり軸受けの油液が触れる外側中空円筒の内面と内側円筒側面を油液接触面として定義した上、油液の粘度(Dynamic Viscosity)などの特性値を設定します。

Fig.1 すべり軸受けを模擬した二重円筒モデル

Fig.1 すべり軸受けを模擬した二重円筒モデル

以上の条件設定のもと解析により得られた油膜圧力結果をFig.2、Fig.3に示します。ここでFig.2はシャフト(内側円筒)回転時の油膜圧力分布の変化をベクトルで示し(圧力分布から求められる節点力の分布として表示)、Fig.3はシャフト回転数に対する油膜力の変化をグラフ表示しています。これらの結果より二重円筒のクリアランスが狭くなるに従い圧力が高まっていること、またシャフトの回転数を上げるに従って圧力が上昇していく現象が捉えられています。

今回DAFULのトピックとして逸早くご紹介したEHD機能の導入は、対象範囲が限られたこの分野への初期の機能強化ですが、今後、適用範囲、評価可能項目が広がるように機能拡充が予定されています。

Fig.2 シャフト回転時の油膜圧力分布変化

Fig.2 シャフト回転時の油膜圧力分布変化

Fig.3 シャフト回転数に対する油膜圧力

Fig.3 シャフト回転数に対する油膜圧力

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