HOME技術コラムFRPクラッシュボックス研究・開発のご紹介

コラム:衝撃・安全

FRPクラッシュボックス研究・開発のご紹介

科学・工学技術部 CAE技術課 秋田 麗佳

[2019/03/13]

CTCでは衝突ソフトウェアLS-DYNAの販売・保守・委託解析業務と併せて、自動車分野における様々な研究・開発にも多数参加しております。本記事では、CTCの社外研究活動成果の一つとして、(公社)自動車技術会における「繊維強化プラスチック(FRP)を用いたクラッシュボックスの研究・開発活動」についてご紹介いたします。

今日、自動車衝突時の乗員の安全確保だけでなく、修理費用軽減という目的のためにも、自動車部品の損傷性および修理性の評価が重視されています。クラッシュボックスは数ある自動車部品のうち、衝突時にエネルギーを吸収するための部品であり、バンパーの裏側に位置します。軽衝突時にはバンパーからクラッシュボックス部分までが潰れることで、衝突のエネルギーを吸収し、車両のフレーム本体には変形被害が及ばないようにする役割を持ちます。

クラッシュボックスのイメージ図(車両: FHWA/NHTSA NCAC公開モデル)

クラッシュボックスのイメージ図(車両: FHWA/NHTSA NCAC公開モデル)

ランダムガラス連続繊維と熱可塑性樹脂を母材とするFRPは自動車用材料としても実績があります。自動車技術会は長年にわたり、このFRPを用いたクラッシュボックスの研究・開発に注力しており、CTCも2010年よりこの研究・開発活動に参加しております。

一般にFRPのエネルギー吸収は金属材料での座屈と異なり、繊維の破断や積層剥離などの破壊形態をとりますが、特に円筒形などの単純構造体では、軸方向に圧縮する際に側壁が内側と外側へ花びらが開くように折れ曲がりながら連続的に進行する、「プログレッシブ・クラッシング」と呼ばれる破壊モードが知られています。このモードは、破壊が連続的に進展することにより、エネルギー吸収体としては理想的な矩形波形を有することが大きな特徴です。プログレッシブ・クラッシングを効率的に発生させるためには、「トリガー」と呼ばれる、き裂の初期誘導部を設けることが効果的であるとされています。

これまでの活動

FRPクラッシュボックスの初期の微小破壊が、連続的で安定なプログレッシブ・クラッシングヘ遷移していく過程について、実験的な観察・解析を実施し、FRPクラッシュボックスがゼロベースから構造設計できるよう、破壊のメカニズムをシミュレートすることが可能な数値解析モデルの構築を行ってきました。

  1. 圧潰試験結果に基づく破壊現象の分析:長繊維ランダム系FRP円筒の軸方向圧縮時における初期圧壊メカニズムの解析

トリガーを有するFRP円筒形のエネルギー吸収体の圧潰試験を行い、トリガー部のき裂発生からプログレッシブ・クラッシングに至るまでの破壊形態について外観観察、断面観察、およびX線CT装置を用いた内部繊維の状態観察を行いました。

  1. 破壊現象数値解析モデルの構築:Fracture simulation of an FRP tube with continuous random fibres at the initial stage [1]

LS-DYNAの接着要素(Cohesive Element)を用いて、FRP 円筒のプログレッシブ・クラッシングが再現可能な数値モデルの開発を行いました。プログレッシブ・クラッシングにおけるセンタークラック発生の実用的なFEM モデルを構築し、FRP円筒を軸方向に圧縮した際の初期圧壊現象のシミュレーションを実現しました。

  1. FRP円筒の軸圧縮における層間の破壊力学パラメータ影響の調査:

さらに、上述の構築した破壊現象数値解析モデルを用いて、材料内部の損傷が始まる臨界応力やき裂進展特性を表現するパラメータを変化させ、トリガー部の破壊モードに及ぼす影響を調査しました。

今後はこの研究活動で得られた知見をもとに、CAEシミュレーションを活用して、エネルギー吸収効率の高い、多様な形状のFRPクラッシュボックスを設計することを目指していきます。

  • FRP: Fiber Reinforced Plastics
  • [1] A. Koike, R. Akita and A. Yokoyama, “Fracture simulation of an FRP tube with continuous random fibres at the initial stage” International Journal of Automotive Composites, Vol.4, No.1, pp.52-70 (2018).