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コラム:機構・切削

【機構・切削】機構解析の工夫

科学システムサポート部 CAEサポート課 山崎 義昭

[2017/12/20]

機構解析では、変形を考慮しない剛体で構成された要素の運動挙動をシミュレーションすることから始まり、FEM(有限要素法)構造解析と連成することで、構成要素の変形を考慮した解析が実施できるように発展してきました。また、計算機性能も大幅に向上した結果、より高度で、より広範囲の問題に適用できるようになってきました。しかしながら、より現実に近い解析への要望は、解析規模の増大から改めて計算時間の増大という問題につながってしまいました。例えば時間変化に伴うシミュレーションを行なうためには、直接積分法を用いて時間を追った解析を行なう必要がありますが、構成要素すべてに弾性体を用いたモデルでは現実的な時間で解析することが厳しいものとなってきます。そのため、開発で適用するためには計算時間の短縮を目的とした何らかの工夫を行う必要があります。

計算時間に対して最も影響があるのは、構成する要素のボディーの表現です。
機構解析でのボディーには、大きく分けて、剛体/弾性体(Modal)/弾性体(Nodal)があり、以下の様な特徴があります。

  • 剛体での表現は、変形は考慮されませんが一般的に高速に解を得ることが出来ます。
  • 弾性体(Nodal)での表現は、FEMで表現するため、大変形、材料非線形など変形を表現するために最適ですが、自由度が非常に大きくなり計算負荷が大きく、計算時間は掛かる場合が多いです。
  • 弾性体(Modal)での表現は、FEMを利用しますが解析に先立って実施する固有値解析により入力荷重に対する変形形状を表現する固有振動モードを計算しておき、その中から必要なモードを組み合せて変形を表現するため、計算負荷は小さく比較的高速に計算を行なえます。しかしながら、大変形、材料非線形や局所的な変形を扱うことが出来ないといった制限があります。
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計算時間に関しては剛体 / 弾性体(Modal) / 弾性体(Nodal)の順に計算の負荷が飛躍的に大きくなっていきます。より現実に近い解析を行なうためには、全ての構成要素を弾性体(Nodal)で表現して、計算機の能力にまかせて計算を実行するといった方法をとることもありますが、現実には、大規模なモデルで時間変化を伴う解析の場合には、実用範囲の時間内に計算結果を得ることは難しい場合が多々あります。この様な場合には、実際に評価したい内容に合わせて、剛体や弾性体(Modal)など計算負荷の小さなボディー表現に置き換えることで、計算時間を実用範囲内に抑えるといった手法をとります。

例えばチェーンの挙動解析を実施する場合、チェーンのリンク同士を組合せてモデル化を行いますが、最初のステップとして剛体モデルを使用し全体の機構挙動を確認します。次のステップでは一部のチェーンリンクのみ弾性体で表現して変形状態や応力などを確認します。最終的には検討する内容や計算時間に応じ、チェーン全体を弾性体で表現して解析する場合も考えられます。このようにステップ毎にボディーの表現に剛体と弾性体(Nodal)モデル、あるいはその組合せを利用して計算時間の短縮を図り、必要な結果を実用範囲内の時間で効率よく得るようにします。

機構解析ソフトDAFULではDrivetrainツールキットが用意され、これを用いることで、ボディー表現を簡単に組合せることが可能です。DAFUL/Drivetrainツールキットでは、トランスミッションの様な、歯車、シャフト、ベアリング、ハウジングで構成されたシステムをシャフトの回転数、トルクなどを時間的に変化させながらシステムの振動状態を解析することが出来ます。つまり定常状態の振動ではなくて、非定常な状態での振動結果を得ることが出来ます。回転の動作の模擬だけであれば剛体で構成されたモデルを利用して計算することは比較的容易ではありますが、必要なギヤの伝達誤差や周波数トラッキングの特性を得るためには、構成要素の弾性的な扱いが必須となります。しかしながら、トランスミッションの様な規模の大きなモデルでは単純に全てを弾性体(Nodal)で表現したのでは、非定常な条件のもとで結果を得るために膨大な計算時間が必要で実用的ではありません。そこでDAFUL/Drivetrainツールキットでは、歯車を歯の剛性を考慮した剛体で表現し、シャフトをFEMの梁要素による弾性体でシンプルに表現し、ハウジングを振動の伝達を十分に表現できる詳細な弾性体(Modal)で表現するといった様に巧みにボディーの弾性体表現を組み合わせることで、計算負荷を減少させながら弾性効果を含んだギヤの噛み合い解析に対し圧倒的なパフォーマンスを実現させています。

DAFULは開発当初より弾性体を扱うことを基本に開発が進められており、解析の中で自由自在に、剛体 / 弾性体(Modal) / 弾性体(Nodal)ボディーを組み合わせて利用することが可能です。さらに、DAFULの扱う弾性体ボディーはNodal/ModalのFE(有限要素)ボディーからCADデータをメッシュ分割せずに利用できるMF(メッシュフリー)ボディーまで利用可能となってきました。
ユーザーは、機能性、計算時間、利便性など様々な切り口で様々なタイプのボディーを適材適所に組み込むことが可能です。

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