HOME技術コラムギヤ振動解析ツールのご紹介

コラム:機構・切削

ギヤ振動解析ツールのご紹介

科学システムサポート部 CAEサポート課 山崎 義昭

[2017/04/14]

構造解析は歴史的にはもともと単一の部品が解析対象であり、部品に作用する荷重/境界条件から変位分布などの内部状態を求めることが目的であったのに対し、機構解析は歴史的にはもともと複数の剛体部品からなる系が解析対象で、相対運動を様々な形で拘束された系に荷重や運動を与えたときの系全体の運動挙動を求めるが目的でした。近年では構造解析で複数部品の運動を解いたり機構解析で変形を考慮したりとその境界が曖昧になる方向にそれぞれ進化を遂げており、機構解析では有限要素法(FEM)の仕組みを取り入れることで変形を伴う部品の運動挙動や振動の解析が可能になってきています。

変形を伴う動的な運動解析の1つにギヤを含む駆動系の解析があり、その解析の難しさと規模から今でも様々な試みがされている分野です。ギヤはコピー機やプリンター、変速機やステアリングなど様々な製品に使われる、代表的な機械要素の1つですが、ギヤが動作することで振動が他の部品に伝わり、騒音などの原因になることはよく知られています。特に自動車関連では、エンジン振動の低減技術の発達やハイブリッドカーや電気自動車におけるモーターの活用により自動車における振動レベルが低下しており、これまで隠れていた振動が目立つようになってきました。この対策としてギヤ振動解析の需要がますます高まってきています。

以前はギヤの運動解析として主にFEMを用いた動解析が主流でした。FEMによるギヤ解析ではギヤの噛合いを接触により精度良く再現するため、歯先形状を詳細なメッシュにすることが必要だったためモデル規模が大きくなる傾向にあり、現象時間を長くとった解析は計算時間の観点から非現実的でした。そのため、ギヤの噛合いの振動解析と言えば、定常回転状態の挙動のみに着目した現象時間の短い計算が一般的でした。

機構解析ソフトウェアDAFULでは、機構解析ベースでギヤ噛合いの振動解析を実現するドライブトレイン・ツールキットの開発が進んでいます。ツールキットでは"Thin-slice"モデルと呼ばれる専用のギヤモデルが採用されています。このモデルではギヤを軸方向に薄くスライスした断面の集合で表現し、各断面はパラメータベースのギヤ歯形形状にFEMで計算した剛性情報を組み合わせることでギヤを表現しています。これにより、弾性効果を含んだギヤの噛み合い解析に対し圧倒的なパフォーマンスを実現しています。

イメージ

ツールキットは他にも駆動系の構成要素としてシャフト、ハウジング、ベアリングをサポートしています。シャフトやハウジングはソリッドメッシュによる詳細なモデリングだけではなく、簡易変形モデルとして、前者ははり要素を利用したモデル、後者はモード合成法を利用したモデルがサポートされています。ベアリングはパラメータベースのモデル化がサポートされており、寸法パラメータ等を入力するだけで簡単に作成でき、任意の姿勢に対する反力を理論計算ベースで高速に計算できるモデルとなっています。ベアリングに関しては、次期バージョンではカタログ型番からモデルを生成することも可能になります。これらの多くのモデルや機能はツールキット付属の専用デザイナーGUIで構築可能であり、また計算結果は専用のポスト処理機能により、ギヤ噛合い誤差、接触力分布、STFTカラーマップなど振動騒音解析に特化した結果評価を行うことが可能です。

このツールキットを利用すれば、FEMによるギヤ噛合い解析と比較して高速でスムーズな計算が実現され、現象時間を長くとった解析や、複雑な駆動系全体を考慮した大規模な計算、回転変化などを考慮した非定常状態の解析などが手軽に実施できるようになります。
機構解析ソフトウェアDAFULは次期バージョンが近日リリース予定ですが、ドライブトレイン・ツールキットのほかにも熱解析機能の組み込みなどがおこなわれ、適用領域の拡大が図られています。

DAFULのご紹介ページはこちら
http://www.engineering-eye.com/DAFUL/index.html

DAFULの体験セミナーご案内ページはこちら
http://www.engineering-eye.com/seminar/daful.html