バージョン情報
PFC2D/PFC3D V.4.0の主なバージョンアップ項目:V.3.1 → V.4.0
64Bit OSへの対応
PFC2D、PFC3D 64Bit版により、モデルサイズがほぼ無制限になります(17GBのアドレス可能メモリ)。
32ビットアーキテクチャに基づくコンピュータは、仮想メモリ(RAM)上の232バイトの情報を処理することができます。全てのコンピュータのオペレーティングシステムにより使用されなかったメモリは、実行中のアプリケーションでは使用され、これにより、解析可能な最大モデルサイズが規定されます(およそ2~3GB(利用できるハードウェアに従う))。
これは、ほとんどのPFC3D問題に対し十分ですが、何十万個の粒子を扱う場合は、必要なメモリサイズはすぐに利用可能なメモリサイズを超えてしまいます。
たとえば、一辺が80m以上のSRM岩(synthetic rock mass)モデルにおいては、80万以上の粒子が解析のために必要となります。
このようなモデルは、従来のデスクトップコンピュータ上でモデル作成するには大きすぎるため、より新しい64ビットアーキテクチャを必要とします。
64ビットコンピュータは264ビットのメモリ(16GB)を処理することができるため、理論上、使用するハードウェアにのみ依存するようになります。
次の図で示すように、立方体のSRMモデルは、3ステップで作成されます。
- 互いに組み合わせることができる、pbrickを作る
- 亀裂のない周期的な粒子アセンブリを作る 個別亀裂面ネットワーク解析(discrete fracture network、 DFN)の結果に基づき、スムースジョイント面(smooth-joints)によりそれぞれの粒子をクラスターにする。
このような亀裂面のネットワーク図は、粒子を半透明表示にすると、以下のような表示になります。
SRMシミュレーションモデルは、採掘されたSRM岩の物性値測定に使われ、従来の方法(引張強度測定、一軸圧縮試験、三軸圧縮試験)を使ってテストされます。
Smooth-joint contact modelの追加
それぞれの粒子接触点方向に依存しない直線状のインタフェース面が考慮できる接触モデルの追加。
1つのスムースジョイント接触面(smooth-joint contact)は、隣り合う2つの平面サーフェスから成る、1つの平面によって定義されます。2つの接触している粒子は、隣り合う2つのサーフェスで結合されます。膨張を含むすべり(クーロンスライダー)を考慮した接触力と変形の計算式が適用されます。各々のタイムステップにおいて、粒子間の相対変位の増分値は、ジョイントサーフェスに対する直角方向と接線方向に分解されます。
スムースジョイントモデルは粒子間のオーバーラップが許されるので、ジョイントの挙動は"スムース"的に表現されます。
粒子は隣の粒子の周りを移動するのではなく、粒子がジョイント面に沿って"すべり"することが保証されます。
それぞれのスムースジョイント接触を設定し、すべりジョイント面をモデル化することができます。
上の図は、1つの貫通する摩擦ジョイント面が設定されたPFC2D、PFC3Dモデルを示しています。 左の図では、青線は初期に定義されたジョイント面を示しています。赤線はスムースジョイント接触を示しています。側面拘束を考慮しない単軸圧縮条件を用いています。右の図は両方のモデルの速度場を示しています。試験片はジョイント面に沿ってすべりが発生しています。
上の図は、PFC2D(左図)、PFC3D(右図)の、摩擦係数=0の貫通するジョイント面を有するサンプルです。
粒子の最下層は固定され、上のブロックの動きを止めるためにWallが左に設置されています。また、重力は下方向に作用しています。
変形に伴い、粒子の間に新たなスムースジョイント接触が生成され、大きなせん断変形の結果が現れたことに注目してください。
スムースジョイント接触モデルの詳細なアルゴリズムは、別資料に記載しています。
"Smooth Joint"
LOP Slope
以下に、スムースジョイント接触モデルの実用的な適用例(LOP Slope)を示します。
Large Open Pit (LOP)はマイニング研究コンソーシアムのプロジェクトに利用された実例です。LOPスロープモデルには、岩盤と採鉱前の応力場を表現するために、破壊ネットワーク面解析(DFN)のシミュレーションを含む特化されたFISHルーチンとスムースジョイント接触モデルが使用されました。
そのモデルは、坑壁のマッピング、室内実験で得られた岩石強度、および不連続特性の評価に基づいて作成されます。
2次元のジョイントのトレスは、3FLOを使用した3次元DFNから抽出されました。
ここで示しているモデルは、坑を掘削する前の状態であります。
坑の開削シミュレーションの結果では、斜面は底面ジョイント面のスライドおよびそれに伴うトップリング現象が示され、クリープのような挙動が示されました。
トップリングの深さと範囲は、掘削とともに増加しました。
全体的な挙動は、実際の開削斜面での観測と一致しています。
FISH関数の拡張
粒子サイズの変更に伴う複数クランプまたはボンディング領域の生成など、固体材料をモデリングするためのFISH関数の機能拡張。
PFC V.4.0の機能追加内容の一つは、モデル生成とシミュレーションをより簡単になるように、新たな材料の生成手順を含むFishTankのアップデートです。
FishTankは等方性および密に接触する粒子試験片を自動生成することを可能にします。
立方体、円筒形、球形の粒状体の粒子体試験片は、複数の材料特性の範囲、スケール、形状を指定することにより、自動生成が可能です。
試験片物性の室内試験シミュレーションについて、単軸およびBrazilian引張、単軸圧縮および3軸圧縮に応用可能です。
新たな材料生成の手順は、以下のステップの通りです。
- 材料生成のための容器全体に、初期粒径分布および摩擦0の粒子が密にパッキングされます。
- 粒径は、指定された領域の中でさらに細分割されます(l=0、再分割しない領域)。領域および再分割のレベルに従って、以下の図に示すようにさらに小さい粒径に分割されます。
細分割される領域の中の各々の粒子は、体積の合計が初期粒子と同じになる2つの小さい粒子に置き換えられ、このプロセスが指定された細分割レベルに達するまで繰り返されます。
- もし、初期形状がクランプ粒子であれば、上記の1、2ステップ中の粒子は、同じ体積のクランプ粒子に置き換えられます。
クランプ粒子は、粒子半径と位置を指定するクランプテンプレートを使用して簡単に定義できます。
その機能で、クランプ粒子の体積を自動的に計算され、スケールファクターおよびクランプのスケーリングを計算し、またクランプの方向はランダムに決定され、重心位置は初期粒子の重心位置に置かれます。 - 等方性応力が得られます。粒子形状が円か球ならば、浮いている粒子(ユーザー定義の接触点数より接触点数が少ない粒子、通常点数3)は、取り除かれます。
最終的な集合体サンプルは、必要に応じて接触またはパラレルボンドが加えられて、生成されます。
同時に、粒径の細分割とクランプ処理は、集合体サンプルの摩擦角、配置数、空隙率等の特性に重要な影響を及ぼします。
クランプの影響
複雑なクランプ形状は、円/球の位置と、基本クランプ粒子の半径を定義することにより簡単に定義されます。
初期のパッキング(先に述べたように)は、ランダム方向および同じ体積を持つ基本クランプ粒子から置き換えられます。
過去の研究によると、複数粒子からなるクランプ粒子を使うと、球体粒子を使用するのと比較して、PFCの試験片(集合体サンプル)の摩擦角が大きくなります。* これにより、マクロ的な材料物性に対し、より現実的に表現できます。
クランプ定義の後、希望する細分割の範囲と、細分割サイズの程度を定義することにより、下の図のように複数のミクロ的な物性を有する細分割が自動的に行われます。
*M.E. Pierce et al. "PFC3D modeling of caved rock under draw," in Numerical Modeling in Microemchanics via Particle Methods, Proceedings of the International PFC Symposium, Gelsenkirchen, Germany, 6-8 November 2002. Heinz Konietzky, Editor. Taylor & Francis, 2004.