パーツ精度の検討(ミリング、アルミニウム)
目的
アルミニウムの部品を削る際の部品精度を上げることを目的としてシミュレーションを活用する。下の図の薄いリブ形状を削る際に熱が部材にかかり変形を起こし、5%の割合で不良品が出る問題が起こった。現在、年間15000 個の本パーツを製作している。AdvantEdge でシミュレーションを行い、スピードとフィードを変更することにより、部材に残る熱量を下げることが可能かどうかを試してみた。切削効率は現状のままとする。
方法
まず現状の加工条件にてシミュレーションを行なう。次にトータルの切削効率を下げることなくフィードとスピードを変更して部材への熱が最小限になるパラメーターを見つけ出す。(表1)
ケース | スピード(m/min) | フィード(mm) |
---|---|---|
1 | 2120 |
0.3 |
2 | 1570 |
0.3 |
3 | 2355 |
0.3 |
4(現状) | 2120 |
0.2 |
5 | 2355 |
0.2 |
結果
以下のグラフは、切削後の部材深さ方向への各切削条件による温度分布を表している。
この部材の温度分布をもとに、各々の条件における熱量に置き換えると以下の通りとなる。
ケース | 熱量 |
---|---|
1 | 23.72 |
2 | 17.58 |
3 | 20.33 |
4(現状) | 21.18 |
5 | 18.78 |
この表から各々の切削条件において部材への熱量が違うことがはっきり判る。現状の切削条件であるケース4からケース2、ケース5に変更することにより、部材への熱を軽減できる可能性がある。ケース2は、切削スピード1570 m/min、フィード0.3mm 、ケース5は、切削スピード2355 m/min、フィード0.2mm、この2つのケースはともに10%切削効率が上がっている。どちらがより良い条件であるか、以下のグラフで切削抵抗を比較してみる。
ケース2(グラフ1)は、スピードを 1570m/min に下げて、フィードを0.3mm に上げたことにより20%切削抵抗が上がった。またケース5(グラフ3)は、スピードのみ2355 m/min に上げただけであるが、切削抵抗は現状とほとんど変化がなかった、しかし、部材への熱が約10%軽減され、切削効率は10%上がった。
まとめ
今回のシミュレーションで当初の目的である部材への熱を軽減することに対する対策を高価な実験を行なわなくても達成することができた。部材への熱を10%軽減、合わせて切削効率も10%上げることができた。
今回の新しい切削条件で2つの点で費用削減につながった。10%切削効率が上がったことにより年間約2300万円(約4万円/時、24時間稼動、240日/年)の稼動コスト削減になった。また、部材への熱を軽減できたことにより不良品の確率も5%から2%に下がった。この削減は450個に相当し稼動コストに換算すると約700万円になり、合計すると約3000万円のコスト削減となった。