切削効率アップを検討(ダウンミリング、SCM440H)
目的
以下の図のように被削材(SCM440H)の一片を削るモデルで評価を行なった。切削加工条件を変更し、シミュレーションを行なうことにより、現状より多い切削量を可能とする条件を導き出す。但し、切削抵抗及び温度分布が極端に上がらないことを考慮する。
方法
まず現状の切削条件についてAdvantEdge を使ってシミュレーションを行い、その結果をもとにスピードとフィード量を変更して、シミュレーションを行い、切削量を増やせるかどうかを検討する。シミュレーション結果から求められた切削抵抗及び温度が現状と極端に上がっていないかを確かめ、最適な切削条件を導く。
ケース | スピード(m/min) | フィード(mm/rev/tooth) |
---|---|---|
1(現状) | 60 |
0.215 |
2 | 100 |
0.215 |
3 | 135 |
0.215 |
4 | 135 |
0.143 |
結果
以下のグラフは、上の4ケースに対して、切削抵抗の履歴を示したものである。
切削抵抗に関しては、切削スピードを現状の60 m/min から135 m/min に上げた場合(ケース1 からケース3)、切削抵抗にはあまり影響がなく、大きな違いはなかった。しかし、フィードを0.215 mm/rev/tooth から0.143 mm/rev/tooth に下げた場合(ケース1、2,3からケース4)は、切削抵抗が約35%下がる結果となった。
図3に各ケースに対して工具に発生する最高温度を示す。ケース3(135m/min,0.215mm/rev/tooth)は、工具材料の限界温度を越えているため工具寿命の面から不適である。ケース2,4はケース1に比べて温度は100℃程度上昇しているものの工具材料の限界温度に達していない。上記の結果から切削量を増やす方法として2つのケースが考えられる。1つは切削スピードを60 m/min から 100 m/min (ケース1からケース 2)に上げること、もう一つは、切削スピードを135 m/min にしてフィードを0.143 mm/rev/tooth (ケース1 からケース4)に下げることである。この2つのケースを切削抵抗で見ると、切削スピードを135m/min にしてフィードを0.143 mm/rev/tooth(ケース1 からケース 4)に下げた場合は切削抵抗を35%減らすことができる。
まとめ
以上の4つケーススタディーを行なうことにより、被削材SCM440H のミリング加工において切削スピードを135 m/min にしてフィードを0.143 mm/rev/tooth に変更することにより、切削量を約50%あげることが可能なことが予測できた。
50%切削効率を上げることは、機械の稼動コストに換算すると1台につき年間約4000 万円近いコスト削減につながった、この機械を稼動させるためには、約4万円/時かかり1日8時間稼動させていた、1年240日稼動される場合のトータルコスト約8000 万円の50%を削減することが可能になる。