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画像で見る 土木の不思議(メルマガアーカイブス)東京都市大学 工学部 都市工学科 災害軽減工学研究室 吉川 弘道 教授

第2回:‘海ほたる’は土木?正真正銘の土木構造物!

「学生:アクアラインの海ほたるは、土木構造物? 建築建物?」
「先生:海ほたるは、正真正銘の土木です!」
とある授業にて、土木構造物の事例(それも典型例)として説明したら、怪訝な顔をする学生がいたので、きちんと説明したことがありました。海ほたるは、レストランや遊技場などがあり、建築物とも思われていますが、海ほたるは、れっきとした(注1)土木構造物です(未だに、明石海峡大橋は建築家が設計したと思っている人もいるとか)。加えて、道路専用施設としては、駐車場(Parking Area)と休憩所を併設し、また両側からのUターン機能(引き返せる)も併せ持つ。
ただし、大型豪華客船の風貌を持ち(右写真)、その規模とも併せ、土木としては異形の構造物とも言える(この辺り、多少主観にて咀嚼していますので、詳しくは、運営会社でもある東京湾横断道路株式会社/Trans-Tokyo Bay Highway Corporationにて問い合せてください)。

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では、海ほたるの本来の機能(役割)は何でしょうか。答えは、商業施設(レストランやゲームセンター)ではなく、アクアラインのトンネル部(川崎側)と橋梁部(千葉/木更津側)を連結する構造物です。そうなのです、海ほたるは、全長15.1kmのアクアライン(道路施設)の海上施設と海中施設を繋ぐ巨大な連結器として設計/建設されたものです。上空から撮影した画像(左写真)を見ると、海ほたるの先端が、海上に途切れて見えるのも不思議な感じがする。
これは、海上にてトンネル部と橋梁部を直接連結することは難しく、盛土式の巨大な人口島を建設したのです。また、海ほたるがないとUターンができず、非常時は大変危険な状態となる。なお、構造寸法は、全長650m、幅100m、5階建て(1-3階/駐車場、4・5階/営業施設)であり、土木界でも類まれな巨大施設と言える。
さて、まとめとして、トンネル、橋梁、換気施設(風の塔)、海ほたるを併設するアクアライン(東京湾横断道)は、当時の最先端技術が投入された世紀の大プロジェクトであったことは間違いないところでしょう。これから長い期間(50年?100年?)、 健全に維持管理&運営する必要があり、次世代/次々世代の受け継ぐことになります。
では、なぜ、川崎側がトンネルで、木更津側が橋梁なのか?紙幅の関係もあり、「土木の不思議」として次回の宿題とします。

注1:「れっきとした」を大辞典にて調べたら、「歴とした(他に類のない)」から派生したと記述されていました.


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