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新・解析クラブ10周年記念インタビュー

インタビュー (1) 阿部 淳さん

アプリケーションサービス部 CAEサービス1課 大場 一輝

[2019/01/11]

はじめに

創刊号 (2008年7月号) の冒頭

創刊号 (2008年7月号) の冒頭
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CTCの科学・工学系技術者向けwebコラム「新・解析クラブ」が今年で10周年を迎えました。この10年の間、会社統合をはじめとする環境の変化に加え、メールマガジン形式からwebコラム形式への変更という新・解析クラブ自身の変化もありました。しかし、創刊時に立てた「隔月発行」と「毎号4本程度の記事を発行」という基本方針が崩れることなく今まで続けて来られたのは、ひとえに読者の皆様のご愛顧のお陰です。関係者一同心より感謝の気持ちを申し上げたく思います。

本記事はいつもの技術系コラムという枠組みから外れ、10周年記念企画として新・解析クラブを支えてきた社員2人にスポットを当てたインタビューをお届けしたいと思います。新・解析クラブの成り立ちや発展を裏話的にご紹介し、本コラムに携わる技術者の思いを読者の皆様に少しでもお届けできればと思っております。

1人目は阿部淳さんのインタビューです。阿部さんは新・解析クラブ創刊時から編集長として5年間運営に携わってきただけでなく、執筆者としてもこれまでの記事投稿数が最多の15本ということで、新・解析クラブ最大の功労者と言っても過言ではないかと思っております。阿部さんには執筆者としての工夫や苦労に加え、創刊時のメンバーとして創刊のきっかけやその後の発展をお伺いいたしました。

阿部さんインタビュー (1) 記事の執筆者として

インタビューをさせていただいた阿部淳さん

インタビューをさせていただいた
阿部淳さん

――新・解析クラブ10周年です。ご存知でしたか?

全く知らなかったです。

――この10年の間、阿部さんは「衝撃・安全」分野において記事を15本書いています。これは新・解析クラブの執筆記事数でNo.1です。

私が人から頼まれやすい性格だからですかね(笑)。「衝撃・安全」分野はANSYS AUTODYN製品の技術チームが担当していますが、私が長年主担当として衝撃分野を取りまとめていたために記事を提供する機会が多かった、ということもあると思います。いずれにせよ、No.1を目指したつもりは全くなく、逆にNo.1だと聞いて驚いています。

――記事を執筆する上でこころがけていることはありますか?

創刊当初の方針でもあるのですが、「単なる製品紹介に留まらない、分野外の人にも面白く読んでもらえるような身の回りのトピックス」を取り上げるようこころがけています。何となく眺めているだけの人であっても自然と読んでしまうよう、タイトルを工夫したりなどしているつもりです。

――私も何本か記事を執筆したことがあるので分かりますが、そういった記事を実際に執筆するのは相当難しいですよね。

まさにその通り、難しいです。まぁ私の記事も全てがそう上手く執筆できているわけではなく、中には記事を依頼したメンバーが執筆をすっかり忘れていたために、急いでひねり出した記事もありますけどね。

――取りまとめの担当として苦労されているのですね(笑)。阿部さんの記事は幅広い内容を取扱っているように思いますが、記事のネタはどのようにして集めているのですか?

記事を書かなきゃいけない、と思っていたら、いつの間にか日々の様々なことに対して自然とアンテナを張ってしまうようになりました。そこでうまく拾えたものを何とか記事にまとめている感じです。調子がいいときはネタがいくつか手元にあるときもありますが、ネタがあるからと言ってすぐに記事に出すと「また書いてくれ」とすぐに頼まれてしまうので、こういうネタは隠し持っておくようにしています(笑)。

――確かに、私も隠し持っていることがたまにあります(笑)。最も記憶に残っている記事はありますか?

記憶に残る…というほど残っている記事は特にないですけど、例えばこの「子供用図鑑のススメ」(2015年10月号) は冒険的な内容でした。このような内容 (子供が図書館で借りてきた「大昔のいきもの」という図鑑に書かれていた恐竜絶滅に関する小惑星衝突説から、衝撃波と地球惑星物理のつながりを紹介した記事) で大丈夫かな?と半ば心配しながら提出しましたが、当時の編集長にも評価いただけましたし、また一部のお客様からも非常に好評でした。分野外の人にも面白く読んでもらえるよう上手く仕上がった記事かな、と思っています。

――お客様からフィードバックがあるのはうれしいことですね。

そうですね。特にメール配信をしていた時代 (2015年度以前) は配信した記事が読まれているのかどうか発行側では全く分からないので、お客様よりフィードバックをいただけることは何よりも嬉しいですね。

阿部さんインタビュー (2) 編集長として

――話は変わりますが、阿部さんは創刊から2013年度末までの間、編集長としても新・解析クラブを支えていただいておりました。

そうですね。新・解析クラブは編集長と数人の編集委員により運営されています。年度の初めに編集長が編集委員に記事を割り振り、集められた記事を編集長が整形して発行手続きを行っています。

――どういった経緯で編集長に就任されたのですか?

それは新・解析クラブの前身である解析倶楽部というメールマガジンまで遡らないといけません。前身の解析倶楽部は数人の仲間が内輪で実施しているような小さい枠組みで持ち回り的に活動していたので、編集長といった人は存在しませんでした。しかしその後、数度あった組織変更のたびに編集員の入れ替えが発生する中で、なぜか私は古参編集員として生き残ってしまい、それがやがて「編集長」という肩書になりました。

インタビューの様子

インタビューの様子

――私はこのインタビューの準備のときに初めて解析倶楽部という前身の存在を知りました。新・解析クラブは2008年7月に創刊したということですが、解析倶楽部はいつ創刊されたのですか?

2003年です。当時はメールマガジンがちょうど流行っていた時期で、当時の部長の鶴の一声で自分たちもメールマガジンを使って情報発信をしていこう、ということになりました。解析倶楽部は構造解析・衝撃解析・電磁場解析分野のみが対象で、製品紹介を行うことを目的としていました。

――解析倶楽部は2008年の新・解析クラブとしてのリニューアルまでなので、5年間続いたことになりますね。

はい。創刊当時は部長が熱意をもって周りを巻き込んで運営していたのですが、部長の異動により船頭のいない船のようになってしまいました。その後は半分惰性で発行を続けていた感じです。それが2008年になり、新しい部長より「より良いメールマガジンを作りたい」というこれまた熱い提案を受け、装いを一新し、新・解析クラブとして再スタートすることになりました。

――だから「新」がついているのですね。ここに新・解析クラブ創刊当時のものだと思われる議事録があります。

(議事録を読み返しながら、) 懐かしいですね。そうそう、製品紹介主体の解析倶楽部に対し、新・解析クラブでは「単なる製品紹介に留まらない、誰が見ても面白い記事にしよう」という方針になりました。

――先ほどの阿部さんのお話に出てきた「分野外の人にも面白く読んでもらえるようなトピックス」という目標ですね。ところで、文字数が400文字以内とあります。

確かに、創刊当時は400字でコンパクトに記事をまとめよう、ということになりました。だいたい400字がメールソフトの1画面に入るくらいだったんですよね。でも、時代とともにだんだん長くなっていきました。

――私が編集委員をしていた2013年頃には1000文字以内程度というガイドラインがありましたが、発行される記事はだいたい1500字程度だった記憶があります。

そうですね。でも創刊当時よりモニターも大きくなりましたし、まぁいいかなと思って放置していました(笑)。400字では短すぎて言いたいことが言えなかったですし。

――今はweb化されて文章のレイアウトもすっきりし、画像なども入っているため、記事が少しくらい長くても読めてしまう気がします。

確かに。創刊当時ではweb化なんて考えもしなかったことです。時代が変わりましたね(笑)。横幅72文字できっちり折り返してメールで発行していた時代が懐かしいです。そういえばその当時、72文字で折り返して提出してくださいとアナウンスしていたのに、74文字で送ってくる人がいたんですよね。仕方がないので私の方で折り返し位置をテキストエディタで修正したんですけど、作業が終わったころに「記事内容を修正しました、再送します」と言って、また74文字で折り返した記事が来て…。こんな話も今では単なる昔ばなしです。

――阿部さんは非常に長く編集長をされていましたが、その後は持ち回り的に皆2年程度で交代していますね。

実は、私が編集長をしていたことは、編集長を交代するという概念がなかったんですよね。

――概念がない、ですか?

そうです。内輪的な活動の中で自然発生的にできた肩書なので、社内の活動として公式なものには位置づけられていなかったんです。そのため、部署内のいろんな役回りと違って、持ち回り的な話にもなりませんでした。

――そういうことですね。では逆に2014年に交代されたのはどうしてなのですか?

新・解析クラブ発行後、創刊当時の部長を中心とした体制も変わっていったなかで解析倶楽部と同様惰性化してしまい、自分の中では倦怠期のようなものに入っちゃったんですね。そのころ本業の衝撃解析技術者としての仕事が忙しくなってきたというのもあり、ある時ふと「あれ、なんでこのメールマガジンを続けているんだろう?」と思ってしまったんです。取りまとめ役の自分が記事を集めなければ自然と新・解析クラブが消滅する気がして、それでもいいかな?なんて思った時もあったんですがさすがに思いとどまり、逆に部の公式な業務に上げて引き継ぐよう上司に掛け合い、結果として公式な業務として上がりました。そこで初めて持ち回り制になり、編集長の交代も行われるようになりました。

――新・解析クラブが廃刊の危機に瀕していたのですね。初耳です。でも、そういう危機を乗り越えたからこそ、いまの創刊10周年があるのですね。

そうですね。創刊当時の内輪的な雰囲気を知っているだけに、よく10年も続いていると思います(笑)。

新・解析クラブの方針をまとめた文書 創刊以降も阿部さんにより少しずつ書き足され、方向性や発行プロセスなどが確立していった。

新・解析クラブの方針をまとめた文書 (画像クリックで拡大)
創刊以降も阿部さんにより少しずつ書き足され、
方向性や発行プロセスなどが確立していった。

阿部さんインタビュー(3) 今後の新・解析クラブについて

――阿部さんは今後も記事を提供し続けていただけるのですか?

もちろん提供させていただきますが、その一方で若手にもっと記事を書いてもらいたいと思っています。新・解析クラブの創刊から10年が経ち、私も当時から10歳も歳を取ったわけですし。一応業務分野別にカテゴライズして記事を書いていますけど、別に業務にそれほど関係なくてもいいし、それだけに記事の執筆に専門性はそれほど要求されないと思うんですよね。身の回りで気になったトピックスについて少し調べれば記事のネタとして十分です。

――しかし、繰り返しになりますが、やはりそういった記事を書くのは難しいです。

そうなんです。それが分かっているだけに強く言えないです(笑)。ただ、エンジニアとして仕事しているのですから、ただ単に目の前の仕事をこなすだけでなく、日々の身の回りのことにアンテナを張り、気になったことを詳しく調べたりしてほしいです。そうしたものがエンジニアとしての教養となって仕事の幅が広がると思いますし、いい記事はそういった生活の中から自然と生まれるはずです。

――では、この記事を読んだCTC若手エンジニアの方、我こそは…と思う方は積極的に記事を執筆してくださいね(笑)。さて、最後に読者の皆様へ一言お願いします。

今回は私をクローズアップしていただいていますが、いま振り返って思うと、どの時代にも記事執筆や運営に対して熱意をもって取り組んでいただいた方々がいらっしゃいました。新・解析クラブ10周年を迎えることができたのはそのような方々の熱意のおかげだと思います。今後も現編集長を中心に様々な記事を提供させていただくはずですので、今後も新・解析クラブをよろしくお願いいたします。

――ありがとうございました。

インタビューを終えて

私も記事を執筆したり編集委員として運営に携わったりしていましたが、それでも知らない昔話や裏話について、インタビューを通して色々とお伺いすることができました。「周りの方の熱意や努力に支えられたおかげ」と謙遜されていたものの、その一方で記事執筆の工夫や若手に向けたメッセージなど阿部さん本人の熱意も十分に伝わってきたインタビューだったかと思いますが、読者の皆様に上手くお伝えすることができたでしょうか。 次回は後半として、現・編集長の池上さんにお話をお伺いしたく思います。