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コラム:機構・切削

チェーンシステムと機構・構造解析

アプリケーションサービス部 CAEサービス1課 坂井 哲也

[2019/06/21]

多くの機械は一つあるいは複数の動力源を持ち、その動力を目的に則して適切な大きさ、方向にコントロールして、それぞれの機械の働きがなされます。この動力のコントロールにはギヤや軸継手、カム、リンク、チェーン、ベルトなどの動力伝達要素が介在します。

この中でベルト、履帯を含むチェーンシステムに着目すると、その特徴は大きな速度伝達比を得られる、軸間距離の自由度が大きい、歯車と比較して衝撃吸収能力があるなどの特徴を有しており、自転車をはじめCVTエンジンに代表される自動車、さまざまな産業機械など幅広く利用されています。

一方、チェーンシステムにはプレート部の延性破壊やピン部のせん断・曲げ破壊、繰り返し荷重による疲労破壊、摩耗によるチェーンの伸びや振動、異音などへの対策を講じる設計・製造上の課題があり、その課題解決にはチェーンシステム稼働中の動的な力学的挙動の把握が必須となります。

その動的な力学的挙動の把握において、機構・構造解析ソフトを用いたシミュレーションの出番となるのですが、チェーンのような同じボディを繰り返し配置するモデルは、ボディ数や接触・ジョイントなどの設定が非常に多くなり、解析モデルの構築が容易ではありません。

弊社が取り扱う機構・構造解析ソフトウェアDAFULは、その対応としてLinks Toolkitを用意しています。Links Toolkitはこのような同じボディの繰り返し配置と設定を自動で行うことができます。チェーンモデルであれば各スプロケットの半径と巻き方向を指定するだけで自動的にチェーンが配置され、あらかじめ決めたルールに従い接触等の設定もすべて自動で行います。

具体的にはシステムを"Path" (スプロケットやプーリーなどの巻かれるもの) と"Segment" (チェーンやベルトなど巻くもの) という概念によって整理して、次の手順でモデルの構築を行います。(モデル構築の概念図をFig.1に示します。)

  1. チェーンを構成する一対のセグメントおよび一対のスプロケット形状を取り込み
  2. 取り込んだチェーンセグメントおよびスプロケットの該当箇所に接触面を定義
  3. スプロケットの径と位置決め、チェーンセグメントの基本寸法(幅と高さ)を入力することでチェーン経路が定まり、チェーンシステム全体モデルを自動生成
  4. 先に定義したスプロケットおよび1対のチェーンセグメント間の接触面の対応関係を指定し、チェーンシステム全体の接触条件を自動設定
  5. 最後にチェーンに所定の初期張力が与えられるようスプロケット間隔微調整の設定を行い、一方のスプロケットに所定の回転トルクを付与

以上の手順でチェーンシステムの動的解析が可能となります。なお取り込む形状をFEメッシュボディとすることで、チェーン稼働時の弾(塑)性変形挙動、疲労の評価も行うことができます。

Fig.1 チェーンシステムモデルの生成

Fig.1 チェーンシステムモデルの生成

チェーンシステムの解析例としてFig.2にチェーン起動動作のアニメーション(弾性体としたパーツに発生VonMises応力を表示)、Fig.3にVベルト巻き掛け伝動とベルト張力の変化を示します。

Fig.2 チェーンシステム起動時の機構動作と応力分布

Fig.2 チェーンシステム起動時の機構動作と応力分布

Fig.3 Vベルト巻き掛け伝動とベルト張力

Fig.3 Vベルト巻き掛け伝動とベルト張力

今回のトピックの中で触れましたLinks Toolkitはじめ機構・構造解析ソフトウェアDAFULにご関心の際は、以下のサイトに掲載の毎月開催されます体験セミナーにぜひご参加ください。

関連情報

DAFULのご紹介ページはこちら
http://www.engineering-eye.com/DAFUL/index.html

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http://www.engineering-eye.com/seminar/daful.html

参考文献
  • 絵ときでわかる機構学 第2版 宇津木 論ら著 オーム社
  • ATの変速機構及び制御入門 守本 佳郎 著 グランプリ出版