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【衝撃・安全解析】解析における材料(固体)の特性とモデリングの基礎

科学・工学技術部 大西 慶弘

[2018/01/04]

われわれの身の回りには様々な材料が存在します。変形挙動を解析する際に、解析ソフト上では、多くの材料定義ができるため、ソフトを使い始めた方には、材料の選択に迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。材料特性を選択する場合は、その材料が持つ特性を知らなければなりません。

例えば、薄い下敷きを曲げた場合、多少の曲げであれば元の形に戻ります。
しかし、さらに大きく曲げると、2つに割れることもあります。あるいは、中央部が折れ曲がったまま元に戻らなくなったり、折れ曲がった部分が白くなったりします。

このような現象を解析する場合には、どのような特性を考慮すべきかをいくつか紹介したいと思います。

上記のようにある薄い下敷きを曲げた後、元の形に戻るという現象ですが、この特性を弾性(Elastic)といいます。金属やプラスチックなどほとんどの材料は加える力が小さい間は、この弾性という特性を持っています。これに対し、ある程度の大きな力を加えたあと、その力を除いても、その変形がもとに戻らない特性を塑性(Plastic)といい、上記の下敷をさらに大きく曲げた場合に、折れ曲がったまま、元に戻らなくなる現象です。ちなみに、一般的にプラスチックとよばれる合成樹脂は、この塑性という特性を持つため、その名前で呼ばれています。

この塑性という特性は、合成樹脂だけでなく、金属でも一般的に見られます。例えば、金属のばねは、微小な力では、もとの形状に戻りますが、ある一定以上の力で、ばねが伸びきってしまいます。この現象も弾性と塑性によるものです。また、上記のように、下敷きが2つに割れるような現象は、破壊(Fracture)といいます。金属やプラスチックの場合は、力をかけていくと、最初は弾性であり、その後、塑性にうつり、さらに力を増やすと最後は破壊するというのが一般的な挙動です。中には、ガラスのように、弾性からいきなり破壊するという材料もあります。通常の製品は、使用状態において力が作用されていても、力を戻すと元の状態に戻る、つまり、弾性範囲内で収まるように設計されています。

上記のような弾性や塑性とは異なり、粘弾性という特性をもつ材料もあります。粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせ持った特性のことです。粘性は、流体が持つ性質として用いられることが多いのですが、水のようなさらさらの流体では粘性が小さく、どろっとしたマヨネーズのようなものは粘性が大きいという、物質のねばりの度合いを表す特性です。固体に関しては、力を加えて変形させる際に、力を加えたあと力を除くと、即座に元の形に戻るものは、粘性が低く、力を除いたときに、ゆっくりと変形が戻るものは粘性が高い材料です。前述のばねなどは、力を除くと即座にもとの形に戻るので、粘性の特性はもっていません。
一方、低反発枕のように、力を加えたあと力を除くと、形が徐々に戻るような材料は粘性を持っています。この粘性は、変形速度とも密接に関係しており、変形速度による材料の変形特性の違いを表現するのに使用される場合もあります。

衝撃解析で使用される材料特性は様々ありますが、例えば、自動車の衝突の解析で使用される材料特性の大部分は、上記で説明した材料特性が使用されています。特殊な特性を設定することはそれほど多くありません。ただし、同じような金属でも、同じ弾性、塑性という特性はもっているものの、実際の力と変形の関係は、異なるため、それぞれの材料の特性を正しく考慮することが重要になります。当然ながら、それを考慮した計算をしないと、正しい計算ができません。極端なことを言えば、弾性と塑性を考慮しても、弾性から塑性にかわるタイミングが正しくないと、ばねを引っ張って、のびきるという現象は再現できず、どれだけ引っ張っても、力を除いた瞬間には元に戻った結果になってしまう場合もあります。

ただし、実際に計算する場合は、必ずしもすべての材料特性を厳密に考慮する必要はありません。その材料がどのような特性を持っているかということと合わせ計算に必要な特性はどのレベルまでかにより、考慮する必要性は変わってきます。負荷の大きさはどの程度か、負荷の速度は速いか遅いか、など、さまざまな条件によって、材料を表現する特性は異なります。そのため、計算をする場合には、どのような特性が現れるかを理解しないと(あるいは、予測できないと)、必要な材料特性を設定する判断ができず、正しい計算をすることができません。

最近は、計算機、ソフトウェアが発達してきましたが、結果の精度は、正しく特性を考慮されているかなどに大きく影響します。その部分は、結局、計算する人、結果を判断できる人次第なのです。材料の話は、材料の種類だけ存在すると言っても過言ではありません。また、それぞれの特性についても、理論的側面、実現象からみた話など、考え方によっても話はかわってきて、尽きることはありません。

CTCでは、材料に関する講習として、有限要素法の応用講座として弾塑性構成モデル編というのをご用意しています。
http://www.engineering-eye.com/seminar/lsdyna/14.html

また、今回ご紹介した以外の特性として、コンクリート用の構成モデルを使ったものの解析の紹介やクリープ解析のコラムもありますので、一度、参考として読んでみてください。

コンクリート用構成モデル
http://www.engineering-eye.com/rpt/column/2017/0801_autodyn.html

クリープ解析
http://www.engineering-eye.com/rpt/column/2017/1001_finasstar.html