HOME技術コラム土木構造物において解析の持つ役割

コラム:建設系

土木構造物において解析の持つ役割

科学・工学技術部 建設技術課 酒井 和男

[2017/10/13]

図

我々の生活を陰ながら支えている道路や橋、ダムなどの土木構造物は、平時はもとより、災害時にも一定の安全性や復旧性が求められる大変重要な構造物です。そこで橋を例にとって、どのような想定をして安全性を確保しているのか見ていきます。

橋と一口にいっても、10m以下の小規模なものからスパンが1kmを超える明石海峡大橋のような長大橋まで、様々な橋があります。ただ、規模は違っても設計の基本思想は一緒で、平時は自重、自動車(列車)、温度、風などの荷重に対してどのくらいの力がかかるかを計算し、その力に対して損傷しないように断面の大きさや鉄筋の量、鋼材の板厚等を決めています。規模が大きくなると、例えば施工中に構造系が変化していく場合には施工中の安全性を確認したり、風によって共振しないか検討したり、地震時に壊れないようシミュレーションしたりと、様々な要因に対して安全性を確保できるように構造物を設計します。

橋に限らず、こういった計算はいずれも手で行うことが難しいため、「解析」というツールを用いてコンピュータで計算する必要があります。ただ、解析手法は一定でなく、実現象を表現できるように改良が進められています。例えば地震に関しては、それまで地震力を静的荷重で表現していましたが、1995年に発生した阪神・淡路大震災以降は地震力を動的に与えて時刻歴で応答を評価する手法が多くなっています。また、構造物を支える地盤をばねに置換してモデル化する方法から、非線形FEM要素でモデル化するケースも増えてきています。静的から動的、線形から非線形、2次元から3次元と、解析手法は年々複雑さを増してきています。

解析・シミュレーションと聞くと、それさえやっておけば安全だと勘違いされてしまう方もいるかもしれませんが、手法が改良されていることからもわかるように、100%正解のシミュレーションはありません。壊れにくい構造物を設計するために応答値を厳しめに評価しながらも、コストや施工性等とのバランスも考えて、土木構造物は設計されています。

CTCでは、土木構造物の設計に貢献できるソフトウェアの開発・販売や受託計算サービスを提供することで、社会に貢献できるようこれからも努力していきます。

関連製品

橋梁等の骨組系汎用耐震解析ソフトウェア「DYNA2E」
http://www.engineering-eye.com/DYNA2E/index.html

地盤・構造連成が可能な施工段階・耐震解析ソフトウェア「SoilPlus」
http://www.engineering-eye.com/SOILPLUS/index.html

コンクリート構造物の詳細な非線形解析「FINAL」
http://www.engineering-eye.com/FINAL/index.html