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コラム:衝撃・安全

衝撃解析のための高精度コンクリート構成モデルの紹介

科学・工学技術部 CAE技術課 阿部 淳

[2017/06/16]

ここで紹介するのは、毎秒数~数百メートルの速度で衝突する飛翔体に対してコンクリート構造物がどのように大変形・破壊するかを精度良く解析するためのコンクリートの構成モデルです。このような高速衝突問題において、コンクリートの構成モデルに求められる特性はどのようなものでしょうか?箇条書きにしますと以下のようになります。

  1. 非線形圧縮過程
    コンクリートは多孔質材であり、高速衝突時には空隙が潰れながら圧縮されます。
  2. ひずみ速度依存性
    変形速度(ひずみ速度)が速いほど、降伏応力が高くなり、変形しにくくなります。
  3. ひずみ硬化/軟化過程
    コンクリートは変形が進むと徐々に降伏応力が高くなり、変形しにくくなりますが(硬化)、ある時点からマイクロクラック等の発生により徐々に脆くなります(軟化)。
  4. スポール破壊モデル
    高速衝突時にはコンクリート内部に衝撃波および希薄波が伝播しますが希薄波が重なり合ったりして、強い膨張状態が生じると、その部分のコンクリートが破壊します。これをスポール破壊と呼んでいます。これは高速衝突問題特有の現象であり、裏面剥離を正確に再現する上で特に重要な特性です。
イメージ

CTCではこれらの非線形材料特性をすべて考慮した衝撃解析用のコンクリート構成モデル「CAPROUS」を開発しました。この構成モデルを使用して高速衝突試験の再現解析を行った結果の一部を事例紹介として弊社WEBサイトに掲載しております。代表的なコンクリートの破壊モードとして、Penetration(貫入)、Scabbing(スポール破壊、「スキャビング」とも呼ばれる)、Perforation(飛翔体貫通)の3ケースを選択しましたが、どれも試験結果と一致することを示しており、試験結果を良く再現していることがわかります。
さて、コンクリート構成モデルを使用する上で大きな悩みというのが「入力パラメータが多すぎる」点にあります。ほとんどのコンクリート構成モデルでは、膨大な数の入力パラメータをユーザー自身で調査しなければなりません。一部の入力パラメータは特殊な材料試験を実施する必要があり、非常に骨の折れる作業とならざるをえません。しかし、CAPROUSモデルでは、必要パラメータを最小限に抑えることで非常に簡便な入力を実現しました。
入力パラメータとしては「密度」、「静的圧縮強度」、「弾性定数(ヤング率・ポアソン比)」のみで解析が可能です。WEBに掲載した解析結果は、これらの入力パラメータのみで解析した結果であり、再現性を高めるためのパラメータ調整は一切行なっていません。
高速衝突時のコンクリートの変形・破壊状況の解析にご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせ下さい。

CAPROUSモデルを用いた鉄筋コンクリートに対する高速衝突解析事例はこちら
http://www.engineering-eye.com/AUTODYN/case/impact/10_caprous.html