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コラム:製造・構造

LS-DYNAとの付き合い方

科学システムサポート部 CAEサポート課 早川 尊行

[2017/04/14]

今回は、

  1. LS-DYNAのバージョンについて
  2. LS-PrePostについて
  3. LS-DYNA

の情報源についてご紹介したいと思います。
既にLS-DYNAをご利用中の方だけでなく、ご利用を検討中という方にも参考にしていただければ幸いです。

1.LS-DYNAのバージョンについて

LS-DYNAは汎用衝撃解析コードとして、非常に広い分野で利用されています。
新しい機能がどんどん追加され、ユーザ層も実行ファイル容量もどんどん拡大が続いています。2013年にリリースされたR7での大幅な機能拡張(ICFD、CESE、EMソルバーの追加)を記憶されている方も多いかと思います。その後は少し大人しくなったのか?と思われたものですが、機能追加やバグフィックスについて記述してあるリリースノートを確認すると、その後のR8(2015)、R9(2016)でも同等以上の記述があります。よって、ソルバーの拡張(と修正)はR7の時と同等以上の勢いで進んでいると言えるかも知れません。(特にR7.1.0以降、バグフィックスが急増しているのは気になりますが・・)

2016年には、発表順にR8.1.0、R7.1.3、R9.0.1、2017年にはR9.1.0がリリースされました。(弊社からのR9.1.0リリースは準備中)2016年10月時点での開発元のLSTCによる発表資料をみると、R8.1やR9.0.1がオフィシャルの最新版とされ、R7.1.3が安定版といった位置付けのようです。マルチフィジックスや陰解法、あるいは他の新機能が必要な場合には最新版が推奨されています。普段行う衝撃解析で、特に新しい機能が必要ないという向きには、安定版のR7.1.3を推奨というスタンスのようです。R8やR9は衝撃解析についても様々な機能追加があったという事情から、事はそこまで単純ではありませんが、参考にしていただければと思います。なお、我々の場合は業務の性質もあり、最新版のいずれかを利用していることが多いかと思います。

2.LS-PrePostについて

LS-DYNA周辺ソフトウェアの1つにLS-PrePostがあります。主にLS-DYNAユーザ向けにフリーソフトとして展開されています。簡単なCADを扱え、そこそこ複雑なメッシングにも耐えます。大規模モデルも扱いやすくなり、プリとしての機能も充実してきたと言えるでしょう。また、当初はLS-POSTとして開発された経緯から、ポスト機能は十分高機能です。ややトラディショナルな仕様を引きずっていたグラフ機能もversion4.5で刷新される予定です。(デュアルモニター使用者などに恩恵があるとのことです)

イメージ

LS-PrePostの開発では、新機能を追加し続ける一方で「バグフィックスは1週間で対応する」というコンセプトがあるそうで、そのせいか1~2週間に1度のペースで、UPDATE版が登場します。そんなことから、「なんか不安定だな」と思ったら、「とりあえず新しいものを入れてみる」というのが基本です。LSTC社のHPに飛ぶと、LS-PrePostの最新版をダウンロードできます。
http://ftp.lstc.com/anonymous/outgoing/lsprepost/

他にもユーザ向けに提供されている製品(最適化に使うLS-OPT、LS-TaSCなど)やダミーモデル・バリアモデルなど、紹介したいものはたくさんあるのですが、今回は省略します。

3.LS-DYNAの情報源について

次に、LS-DYNAの情報をどういうところで得るか、というお話をしたいと思います。英語ばかりで恐縮ですが、まず確認すべきは、ユーザーズマニュアル(キーワードマニュアル)です。トータルで4000ページを越えますが、たいていは必要なキーワードのRemarksまで読み込めば、多くの問題に取り掛かることができます。あるいは、弊社が開催している「基礎トレーニング」等の資料で基本事項を確認していただくのもよいでしょう。また、お客様の広場へも順次情報を追加していますので、ご確認いただければ幸いです。(ご要望の多い日本語マニュアルについては、現在、実現に向けて協議中です。)

LS-DYNAでどういった解析が可能なのか、事例や開発状況などの情報については、DYNAmore社(※)が公開している様々な情報が有益です。アメリカとヨーロッパで毎年交互に開催しているユーザー会の各種発表資料などが公開されています。
https://www.dynamore.de/en

また、dynalookというサイトでは過去のユーザー会で発表された論文などが公開されており、特に最新の動向や新機能に興味がある場合はこれらが役立ちます。
http://www.dynalook.com/

この他、LSTCとDYNAmoreが共同で運用しているサイトとして、LS-DYNA SupportとLS-DYNA Eamplesがあります。LS-DYNAで解析を行う際の基本事項やサンプルデータを確認できる数少ない外部サイトです。
http://www.dynasupport.com/
http://www.dynaexamples.com/

ただ、実務での勘所とでもいうべき情報はあまり載っていませんので、そのような内容を求める場合はトレーニングコースを受講するのが近道です。我々の場合は、直接LSTCに問い合わせたり代理店専用の情報源を利用して、日々のサポート業務や課題解決に取り組んでいます。

(※)DYNAmore社はLSTC社と共にLS-DYNAの開発、普及に努めるドイツの会社です。
CTCは日本における1次代理店の1つですが、DYNAmoreは0次代理店とでもいうべき地位にあります。ユーザー会の開催や、各種トレーニングコースの開催といったところで、我々やユーザーとの接点があります。

長々と書きましたが、上記以外に1つ強調しておきたいのは、「とりあえず、やってみる」ことの大事さです。LS-DYNAとの付き合い方という意味では、これこそが肝になると私は信じています。LS-DYNAのような汎用ソルバーは、最高の実験環境と言えます。この最高の実験環境をもっといじり倒して、最終的には皆様にライセンス数を拡張してもらえれば・・

おや?つい本音が、といったところで、本コラムを閉じたいと思います。

汎用非線形構造解析シミュレーションツールLS-DYNAの紹介ページはこちら
http://www.engineering-eye.com/LS-DYNA/index.html