HOME技術コラムAbaqus/CFDで流体計算

コラム:製造・構造

Abaqus/CFDで流体計算

科学・工学技術部 CAE技術課 大場 一輝

[2016/12/16]

イメージ

「AbaqusでCFD」と言うと、大抵のCAE技術者には非常に奇妙に聞こえることかと思います。これは、Abaqus(を含む商用の有限要素法コード)が固体を対象とする構造(応力/変位計算)分野を中心に使用されているために、液体や気体を対象とする CFD(数値流体計算)分野とは大きく異なることに起因するかと思います。

しかし実際は、Abaqusは流体を取扱う様々な手法を持っています。例えば、陰解法ソルバーのAbaqus/Standardと陽解法ソルバーのAbaqus/Explicitはともに

  • 1) ALE: 界面追跡法を利用した自由表面流れ計算

を使用することができますし、Abaqus/Explicitではそれに加えて

  • 2) CEL: Eulerメッシュを利用したVOF法による自由表面流れ計算

    ※CEL = Coupled Eulerian-Lagrangian

  • 3) SPH: 粒子法による流れ計算

を使用することができます。

上記1)~3)のラインナップに加え、近年、

  • 4) Abaqus/CFDによる有限体積法ベースの流体計算

が追加されました。Abaqus/CFDはAbaqus/Standard、Abaqus/Explicitとは独立して開発されているソルバーであり、離散化手法もAbaqusの長い歴史の中で培われた有限要素法ではなく、流体分野で一般的な有限体積法をベースとした手法を採用しています(ただし圧力場のみ有限要素法を利用する、という少し変わった定式化をしています)。その他の主な特徴は以下の通りです。

  • 定常・非定常の非圧縮性流体計算を取扱うことができる
    • エネルギー輸送方程式の考慮による温度依存計算も可能
    • Boussinesq近似による少しの密度変動を考慮可能
  • 乱流モデルとしてRANS(レイノルズ平均モデル)に対応
    • Spalart-Allmaras、k-ε RNG、k-ε Realizable、k-ω SSTに対応
  • 線形代数ソルバーとして前処理付き Krylov 部分空間法に対応
    • MPIによる並列計算にも対応
  • その他、多孔質媒体流れ、ALEによるメッシュ境界の移動にも対応

Abaqus/CFDの一番の利点は、Abaqusの構造ソルバーとの連成が非常に簡単に実現できることです。通常この手の弱連成は2つのプロダクト(ソルバー)とその間の通信を実現するインターフェースプロダクトが必要で、複数プロダクトにまたがるために連成計算には高度な知識が必要とされるため、敬遠されがちです。しかし、AbaqusはSIMULIA Co-Simulation Engine (CSE)というインターフェースプログラムを自前で持っており、Abaqus/CFDとAbaqus/Standard(またはExplicit)との連成計算は全てAbaqusプロダクト内で閉じます。またこれらはAbaqus/CAEにて統合的に制御することが可能で、ほぼ全自動で設定をしてくれます。そのためプログラミング的な知識やネットワークの知識がほとんどなくても計算を実行することが可能となります。

Abaqus/CFDはAbaqus/Standard, Abaqus/Explicitとは別の独立したプログラムですが、これらは全て同種、同量のライセンスで実行可能となっております。そのため、Abaqusソルバーのトークンを持っている全てのお客様が実行可能です。

Abaqus/CFD は、流体-構造の連成計算を手軽に実施したい方には最適なソリューションとなっています。ご興味のある方は下記紹介ページにある「資料請求/お問い合わせ先」から弊社へご連絡いただければと思います。

このページの先頭へ