HOME技術コラム温度条件が影響する電気自動車のバッテリ性能予測

コラム:熱流体

温度条件が影響する電気自動車のバッテリ性能予測

科学システムサポートチーム システムシミュレーション技術課 高田 聡

[2016/10/01]

イメージ

電気自動車(EV)に搭載される二次電池(蓄電池)としてリチウムイオンバッテリは、広く一般的に採用されています。
リチウムイオンバッテリは、バッテリ内部温度が標準温度(設計温度)より低くなると内部抵抗が増加するため過電圧も大きくなり、性能が低下します。一方でバッテリ内部温度が標準温度より高くなる場合では、充放電サイクルによる性能劣化が標準温度より早まる傾向となり、性能に悪影響を与えます。
また外気温に対してキャビン内の温度を快適に保つように空調制御を行えば、ヒーターやクーラーの稼動により電力消費は増加します。EVでは内燃機関自動車(ICEV)と異なり駆動と空調制御に利用するバッテリは同一であるため、快適性を維持するための電力消費により航続距離は短くなる要因となります。

このように、EVではICEVと比べて外気の温度条件が航続距離(バッテリ性能)に影響するため、様々な温度条件下でのバッテリ性能の事前予測は、非常に重要な検討となります。また検討にはバッテリの温度変化に伴う性能変化、運転条件や空調制御による負荷、バッテリの温度制御などの複数の要因を考慮する必要があり、システムレベルでのシミュレーションが必要となります。
そこで1次元熱流動解析ソフトであるFlowmaster V7とリチウムイオンバッテリの性能シミュレータを組み合わせた事例についてご紹介致します。

Flowmaster V7では、日射やふく射を考慮できるキャビン要素が実装されており、本要素を使用する事で車室内の快適性を簡単に評価できます。そしてヒータやクーラなどの空調制御系のモデルにキャビン要素を組込む事で、運転条件や空調制御を考慮した車室内空調モデルを構築できます。
また、Flowmaster V7はMATLAB/Simulinkとのインターフェースを有し、Simulinkモデルとの連成解析を実現できます。

Simulink上で構築した車両モデルにドライブサイクル、雰囲気温度、キャビン設定温度等の条件を与えます。与えられた条件の内、雰囲気温度とキャビン設定温度を入力条件としてFlowmaster V7に受け渡します。Flowmaster V7のキャビンモデルでは車室内の快適性考慮した空調制御解析を行い、解析結果として得られるバッテリ負荷をSimulinkに出力します。得られたバッテリ負荷は駆動による負荷とあわせてバッテリ性能シミュレータに受け渡され、解析結果として航続距離やバッテリ充電率、バッテリ温度等の結果が得られます。

このように1次元熱流動解析ソフトであるFlowmaster V7とバッテリ性能シミュレータを組合せる事で、システムレベルにおける様々な条件下での航続距離やバッテリパック寿命などを予測でき、時間やコストの削減が見込まれます。

弊社並びに開発元は、Flowmaster V7を使用した更なる業務改善が実現できる様に上記の事例以外にも他アプリケーションとの連成(連携)機能を今後も継続して積極的に取り組みます。

関連製品についてはこちら

1次元熱流動解析ソフトウェアFlowmaster
http://www.engineering-eye.com/FLOWMASTER/

このページの先頭へ