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コラム:衝撃・安全

水素漏洩による爆発評価

科学・工学技術部 CAE技術課 阿部 淳

[2016/06/17]

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水素を取り扱う施設では、漏洩した水素と空気が混合し、何らかの原因で着火した場合、重大な爆発事故に発展する場合があります。水素は空気に比べて非常に軽いため、漏えいしたとしても速やかに上昇することが考えられるため、空気と理想的に混合することは考えにくいのですが、例えば屋内のような閉空間もしくは水素が拡散しにくい構造だったりした場合、着火の可能性はゼロではないと考えられます。水素爆発で生じる爆発威力は、温度、圧力、水素濃度によって異なりますが、爆轟するか爆燃に収まるかによっても変ってきます。爆燃は火炎帯が数m/s~数十m/sの速度で混合ガス内を伝播する亜音速現象です。水素と空気の予混合ガスが常温常圧の密閉空間内で爆燃した場合、爆発圧力は約7気圧に達すると考えられます。一方、爆轟は化学反応とともに強い衝撃波(爆轟波)が混合ガス内を伝播する超音速現象であり、爆轟波の速度は数千m/sオーダー、爆轟波面背後の圧力は数十気圧オーダーとなります。爆轟現象は実験室レベルでもなかなか設定することが困難で、実現象として爆轟にはそう簡単には至らないと考えられていますが、不幸にも爆轟に至った場合にはこの爆轟波の伝播により被害がさらに拡大する可能性があります。
あらゆる爆発現象を予測し、想定する構造物に対する安全評価を実施するためには、実験的アプローチは安全面およびコスト面から困難であり、数値シミュレーションによるアプローチの方が比較的容易であると考えられます。漏洩した水素と空気の混合ガスが爆発に至る現象は極めて複雑な過程ですが、弊社では、爆発解析分野において永年培われた経験と実績から、以下のような爆発シミュレーションが可能です。

1.水素と空気の混合ガスの状態について

水素と空気の混合ガスの状態として以下の2つの評価が可能です。

(a)水素と空気の予混合ガスを想定想定される任意の水素濃度に対して、予め水素と空気が十分に混合したガスが存在するものとして、爆発解析を実施します。予混合ガスの分布は一箇所に局在するか、または、構造物内全体に充満しているとします。また、水素の濃度分布を設定することも可能です。

(b)CFDによる水素の拡散解析
水素の漏洩および拡散現象をCFD解析によって数値予測し、ある時刻(または定常状態)での水素の拡散状態を評価することが可能です。この水素/空気濃度分布を初期条件として、爆発解析を実施します。

2.水素の反応過程について(爆轟と爆燃)

水素と空気の混合ガスの反応過程として、爆轟と爆燃の2つが挙げられます。
爆轟と爆燃のどちらの反応過程に至るかについては、水素の濃度分布、機器や構造物の形状やサイズなどの諸条件が複雑に関係するため、判断することは非常に困難ですが、これら両方の反応過程を想定した水素爆発特性について爆発燃焼解析ソフトウェアAISTJAN2009を用いて算出することが可能です。

3.流体/構造物連成について

水素と空気の混合ガスの爆轟または爆燃によって生じる爆発威力が機器、構造物、配管などに与える影響を衝撃解析ソフトウェアANSYSAUTODYNの流体-構造物連成機能を用いて解析します。連成機能は強連成(流体と構造物が相互に作用)および弱連成(流体{ここでは水素の爆発威力および流動}の力が構造物側のみに一方的に作用)が可能で、構造物は大変形・破壊に至るまで計算することができます。

弊社の以下のサイトにおいて、水素爆発の解析事例を掲載しております。ぜひご覧ください。

AUTODYNを用いた衝撃問題に関する解析事例はこちら
http://www.eng-eye.com/AUTODYN/case/

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