HOME > テクニカルレポート > 高圧ガス設備等における配管系の耐震設計と解析

高圧ガス設備等における配管系の耐震設計と解析寄稿 本橋 賀津彦

第3回(最終回):ノズル接合部の耐震評価について

2005/05/16

1. はじめに

高圧ガス設備等耐震設計基準の改正により、配管系が耐震設計の評価対象になっています。配管系の評価対象には、配管の他に弁、伸縮継手、塔槽類ノズル、配管サポート等が含まれますが、本稿では塔槽類ノズルの耐震評価について説明します。AutoPIPEでは、ノズル接合部の応力算定を行なうことはできませんが、AutoPIPE Nozzleにて高圧ガスの耐震評価を行なうことができます。

指針では塔槽類ノズルについては基本的にはバイラード法により評価を行なうことが示されています。そこで、バイラード法の概要についても紹介します。また、最後に有限要素法による詳細解析との比較を行ってみましたので紹介します。

2. 高圧ガス設備における塔槽類ノズルの耐震評価

高圧ガス設備等耐震設計基準では、重要度IaおよびIの配管系に接続される塔槽類ノズルについては、配管の設計水平地震力、設計鉛直地震力および配管支持点の移動による荷重に基づく応力強さを算出し、許容応力強さ以下であることを確認する必要があります。指針には以下の解析手法が示されています。

対象ノズル 規格・解析手法
圧力容器
  • WRC 107-1979 (Welding Research Council)
    (薄肉シェル理論に基づいたバイラード法)
  • WRC 297-1987
    (有限要素法(FEM)解析に基づいた簡易手法)
  • 有限要素解析法(FEM)

2.1 薄肉シェルの応力

薄肉シェル理論では、ノズル接合部に作用する半径方向荷重および曲げモーメントによる応力は次式で示されます。次式においてiは、円筒胴にあっては長手方向χと円周方向φ、球形胴にあってはノズル軸に直角な2方向xおよびyをそれぞれ示します。

 
ここで、
T:容器の厚さ
Ni:単位長さあたりのi方向の膜荷重
Mi:単位長さあたりのi方向の曲げモーメント荷重
Kn:膜力に対する応力集中係数(Kn=1.0)
Kb:曲げモーメントに対する応力集中係数(Kb=1.0)

また、せん断荷重およびねじりモーメントによるせん断応力は次式によります。

 
ここで、
ro:ノズルの外半径
Vi: i方向のせん断荷重
MT:ねじりモーメント荷重

主応力(σ123)を求め、最大の主応力差より応力強さを算出し、次節に示す許容応力強さ以下であることを確認します。なお、板厚方向の主応力σ3はゼロと仮定します。

 

2.2 許容応力強さ

レベル1耐震性能評価の応力の種類と許容応力

応力強さの種類 耐震設計用許容応力強さ
1次一般膜応力強さ S
1次局部膜応力強さ及び1次曲げ応力強さの和
(PL+Pb)
1.5 S
設計地震動により生じる1次局部膜応力強さ、1次曲げ応力強さ及び2次応力強さの和のサイクルにおける最大値と最小値の差(PL+Pb+Q) 2 Sy

レベル2耐震性能評価の応力の種類と許容応力

応力強さの種類 耐震設計用許容応力強さ
1次局部膜応力強さ及び1次曲げ応力強さの和
(PL+Pb)
3 S
設計地震動により生じる1次応力強さ及び2次応力強さの和のサイクルにおける最大値と最小値の差(PL+Pb+Q) 4 Sy
地盤変状により生じる1次応力強さ及び2次応力強さの和のサイクルにおける最大値と最小値の差
(PL+Pb+Q)
4 Sy
S:耐震設計用許容応力、Sy:設計温度における降伏点または0.2%耐力

2.3 処理フロー

ノズル接合部の耐震評価手順は以下のようになる。レベル1およびレベル2地震動に対する耐震評価は基本的には同じ流れです。ただし、図では地盤変状に対する評価手順は示していませんが、図の右側の配管変位応答の部分と同じです。

処理フロー
前へ <1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12> 次へ