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橋梁設計に3次元モデルを活かす
SMC-Modelerを開発

左から吉野氏、宮本氏、水田氏、紙永氏

お話を伺った方々

三井住友建設株式会社
土木本部 土木設計部
PC設計グループ 課長 吉野 正道 様
企画設計グループ 課長 紙永 祐紀 様
企画設計グループ 主任 水田 武利 様
企画設計グループ    宮本 卓磨 様

三井住友建設株式会社の概要

三井住友建設株式会社は、土木分野では橋梁、建築分野では高層マンションを得意としており、最近では、設計(D)、施工(C)、維持管理(M)における独自のマネジメントシステム(DCM)のもと、日本のみならず世界で建設事業を推進している。
【事業内容】
建設事業:土木・建築・プレストレストコンクリート工事の設計・施工及びこれらに関する事業
開発事業:不動産の売買、賃貸及び管理に関する事業

三井住友建設では、プレストレストコンクリート橋(以下、PC橋)の3次元モデルを高精度で簡易に作成できる「橋梁3次元モデル作成システム(SMC-Modeler)」を、CTCの3Dモデル自動生成ソフトウェア「C-modeler」をカスタマイズして開発しました。今回は開発に携わった設計技術者の皆さんに、橋梁設計の課題やソフトウェア利用のメリットについて伺いました。

PC橋梁のリーディングカンパニー

1957年、私たちの大先輩がドイツから技術者を招いて、日本で初めて張出し架設工法による支間の大きいPC橋を建設しました。日本のプレストレストコンクリートの歴史は私たちの歩んできた道です。私たちは受け継いだ技術を発展させ、PC橋のリーディングカンパニーであるというプライドを持って日々挑戦しています。

当社が施工した橋はこれまでに4500橋以上に及びます。国内では土木学会橋梁部門の田中賞や、コンクリート橋に関するPC工学会賞、JCI賞などの数々の受賞実績があります。更に、世界の優れた橋を4年に1度表彰するfib賞(International federation for structural concrete(fib) award)を過去3回受賞しています。fibでは世界初の構造や技術が使用されていないと評価されない基準があり、2004年12月に竣工した徳島県・青雲橋は、世界初の道路橋自碇式複合トラス橋としてヨーロッパ以外で初めてfib最優秀賞を受賞しました。

このような橋の施工は作業員の数が1日150~200人にも及ぶ現場もあり、それが3~4年続くと延べ人数は膨大になります。設計技術者もその一員として責任を果たしています。橋は土木構造物の中で一番目立つもの、景色の中に存在するものと考え、機能だけでなく外観も大切に設計を進めています。

設計技術者は新しい橋が竣工したと聞くと、自分の担当でなくても「お花見」ならぬ「お橋見」に行くことがあります。完成した橋を実際に見て、施工のこだわりを確認したり、気になる技術があれば調べたりして、次の業務に役立てようとしています。そういえば当社のホームページには、「橋ガール」と題し当社が施工した橋を社員が見に行き紹介するコーナーがありますので、ぜひご覧ください。
http://www.smcon.co.jp/hashi-girl/

2次元図面から3次元の施工を読み解く難しさ

世界初の技術を導入するような大規模プロジェクトは、計画から設計、施工、竣工まで、5~6年という長期に亘ることもあります。「世界初」の技術をいきなり大きな橋に適用するわけではなく、その前に類似の構造を小規模な橋で試したり、様々な研究や載荷試験を行ったりして培った技術の集大成として大規模な橋に応用します。

設計においては、細かい部分の取り合いや実際の施工時には鉄筋はどんな組み合わせになるのか、どういう手順で組むのか、どんな形状なら大丈夫かなど、頭の中で想像して2次元の図面を作成していきます。橋の断面の幅や傾きの変化も図面に表現する必要があり、全てを計算して、現場で作業員の人たちが施工できるように図面を作りこんでいきます。新しい工法を実施するときは、その難易度が一段と上がります。

昨今、建設業界全体として現場の職員、作業員の担い手不足という課題があります。かつては、当社でも高度経済成長時代に多くの橋を作ってきて、2次元の図面を見れば3次元での施工作業がすぐ分かるという人材が多くいたのですが、これからは変わります。ICT化や3次元モデルの導入は、2次元の図面を読み解く助けとなり、担い手不足を解消する大事な鍵になるのではと考えています。

3次元モデル作成でCTCのC-modelerに着目

CTCのC-modelerとの出会いは2014年のCTCの展示会「CIM JAPAN」です。それ以前から社内で3次元モデルをもっと簡単に作れないかという意見があり、3次元モデル作成ソフトウェアを探していました。こちらのニーズに合致したのがC-modelerでした。他にも設計の数値を使用する3次元モデリングのソフトウェアはあったのですが、上部工ができるのはC-modelerしかなく、拡張性がよさそうなところにも惹かれました。

そこからC-modelerのカスタマイズに取り組み、「橋梁3次元モデル作成システムSMC-Modeler」として2016年12月に発表しました。SMC-Modelerの開発により、これまで2~3週間かかっていた3次元モデル作成が10数分程度に短縮されました。

SMC-Modeler利用のメリット

PC橋にはPC鋼線というケーブルを多数配置します。設計の段階で本数を決めるのですが、必要な本数が多くなってくるとケーブル同士が当たらないように、2次元の断面図、平面図、側面図を書きながら、頭の中で3次元を想像して設計していました。それには想像できるだけの技術力が必要です。SMC-Modelerの最大の長所は、設計段階から使えることです。SMC-Modelerで3次元モデルを作成することで、設計の段階でケーブル同士が当たらないことが確認でき、時間短縮の効果を得られます。

今まで2次元ではできなかったことが、3次元にすることでできるようになりました。例えば2次元でチェックするといっても本当にケーブルが当たっているかどうかは分かりません。3次元にすることで間違いなくできるようになりました。

更に自動干渉チェックという機能を追加したので、人為的なミスがなくなりました。設計者も人間なので見落としも決してゼロではありません。これをかなり早期の段階で発見できます。これは最終的には品質向上につながります。

その他に施工を手助けし、現場の職員・作業員の省力化につながる機能もあります。コンクリートは型枠に流し込んで固めますが、その型枠を発注するのは現場の職員です。1個1個の断面で型枠を発注する場合でも2次元の図面に全部は書いてありません。図面に書いていないところは現場の職員が1個1個絵を起こしていく必要がありましたが、3次元モデルがあればその通りに発注すればいいので、かなり手間が省けます。これは大きなメリットです。

モデル現場から実際の現場へ‐今後の課題

SMC-Modelerは、モデル現場として岩手県久慈市の国道45号夏井高架橋で利用しています。ここではドローン撮影画像から作成した地形の3次元モデルと高架橋の3次元モデルを重ね合わせて、完成形のイメージとして周辺住民の方々や施主に見て頂き、合意形成の一助としました。逆に言えば、近くの誰かのお宅から橋がどういう風に見えますかと言われたらそれが表示できるわけで、その表示までの時間がぐっと短くなっています。今までやりたくてもハードルが高かったことが、より簡単に実行できるようになりました。

これまではSMC-Modelerの開発に注力してきたため、実際の現場への導入はまだこれからとなります。今後は積極的に使って、鍛えて、使いやすく改善していきます。また、使っていくうちに更に欲しい機能が見えてくるのではないでしょうか。

実は開発の発表以来、社内からの期待が大きく嬉しい悲鳴を上げています。先に述べたように当社はPC橋については日本のリーディングカンパニーであり、世界でも良い位置にいると自負しています。その中で橋梁の3次元モデリングの分野でも先行するために、今後は若手にモデルの利用や開発に関わってもらい、技術を継承していきたいと考えています。また、今後は若手にモデルの利用や開発に関わってもらい、技術を継承していきたいと考えています。

トータル建設マネジメントシステム(DCM)で目指すもの

当社では、設計(D)、施工(C)、維持管理(M)における独自のマネジメントシステム(DCM)の構築に取り組んでいます。世の中では、建築がBIM、土木がCIMと言われていますが、当社ではBIMとCIMを分けるのをやめよう、大きな流れとして、デザイン、コンストラクション、メンテナンスと考えていこうとしています。

一方、国土交通省が提唱する「i-Construction」を橋梁分野に展開した「i-Bridge」という構想があります。この目的と一致する取り組みとして、当社は橋梁建設に関連する様々なデータと、管理を効率化する各種ICTシステムをプラットフォーム上で連携させ、一元管理・運用を可能とするトータルシステム「SMC-Bridge」を開発しました。SMC-Modelerもこのプラットフォームに搭載しています。

SMC-Modelerは、SMC-BridgeではDCMのCの部分が強いですが、DCMの大きな流れの中ではDとC、更に情報を乗せていけばMにも関わってきます。DCMを進めるには3次元モデルは欠かせません。それがないとその先に進めない、全てのベースとなるものです。だからこそ精度のよい正確な3次元モデルを作るためにSMC-Modelerの開発を進めてきました。

これからは橋だけでなく建築分野や土木の違う工種にも3次元モデルの利用は波及していくはずです。CTCにはこれからもSMC-Modelerの進化を支えて頂きたいと思っています。

インタビューを終えて

今回のインタビューを通して、三井住友建設の皆様の自社の取り組みのみならず、業界全体を見渡して取り組まれている姿勢に感銘を受けました。
SMC-Modelerの開発着手は3年前に遡りますが、現在に至っても同様の仕組みをもたれている企業はないように思います。
貴社は現在もDCMの大方針の下、多方面でICTの活用を進められています。弊社も引き続き、業界をけん引する貴社の取り組みをお手伝いさせていただければ幸いと考えております。

C-modelerについてはこちらから
http://www.engineering-eye.com/C-modeler/index.html