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独立行政法人 防災科学技術研究所 様土砂災害の危険性を予測し、地図画像で情報発信
-「土砂災害発生予測支援システム」を開発-

お話を伺った方

 総合防災研究部門
総括主任研究員:福囿輝旗様



(独)防災科学技術研究所は、1963年4月に国立防災科学技術センターとして発足し、1978年4月に筑波研究学園都市へ移転、1990年6月に防災科学技術研究所に名称変更、2001年4月に独立行政法人防災科学技術研究所として再発足した。

同研究所では、気象・水災害、豪雨・強風災害、土砂災害、地震・火山災害、雪氷災害等の自然災害を対象とした研究活動を展開している。

研究開発の目標は、防災科学技術の水準の向上を図り、成果の防災対策への反映を図ることにより、「災害から人命を守り、災害の教訓を活かして発展を続ける災害に強い社会の実現を目指すこと」にある。

独立行政法人防災科学技術研究所(以下、防災科研)総合防災研究部門は、「災害に強い社会の構築」を目標に、実物大の模型実験による災害現象の解明、スーパーコンピュータ等による各種災害現象のシミュレーション、災害危険区域のマッピングおよび防災情報の提供、災害に強い社会システムの提案等々総合的な研究開発を行っています。

総合防災研究部門では、防災基盤科学技術研究部門と共同で土砂災害研究グループが中心となって、2000年度から6年計画で大規模な地すべりから小規模な表層崩壊まで、小地域ごとにその発生危険性を予測し、迅速にわかりやすく提示する「情報発信する土砂災害発生予測支援システム」に取り組んでいます。CTCはその概念設計からプロトタイプの開発、Web上での提示まで全面的にサポートさせていただいています。

個々の地点の危険性を予測し、地図上に画像表示。

山岳が多く、起伏に富んだ地形のわが国では、台風や集中豪雨で毎年土砂災害が発生しています。土砂災害の発生危険性について、広域についての提示方法は種々あり、実用化されているものもあります。しかし、土砂災害は裏山が崩れたというような小規模なものでも人命に関わることから、小規模、小区域の危険性を予測するシステムの開発が待たれていました。そこで土砂災害研究グループが中心となって、大規模な地すべりから小規模な表層崩壊まで、小地域ごとにその発生危険性を予測し、迅速にわかりやすく情報発信する土砂災害発生予測支援システムを開発することになりました。

土砂災害は、斜面地形、土質、住民の生活形態や雨の降り方などが複雑に関連して日本全国いたるところで発生します。それを防止・軽減するためには、従来のハード対策だけでは限界があり、ソフト面での対策の重要性が指摘されるようになりました。

土砂災害発生予測支援システムは、限定された小区域の個々の斜面について土砂くずれの危険性を予測するとともに、それに伴う土砂災害の危険性を住民へわかりやすい形で提示することで、個々の住民の防災対策・判断の支援を行うことを目的としています。

防災科研では、かねてより地すべり地形分布図を作成・発行するとともに、GISなどでの解析が行えるように、地すべり地形の位置情報と属性情報を数値データベース化し、インターネットで公開しています。これを基に、大型降雨施設を用いた崩壊実験、現地斜面の統計解析、現地調査などを行うとともに、地すべり斜面の危険性評価と土砂流下範囲(被災域)の推定を行い、これらの情報を斜面情報としてデータベース化しました。

一方、高精度なマルチパラメータ(MP)レーダを用いて降水量の推定を行う手法と特定地点における表層崩壊の危険度を予測する手法を開発しました。土砂災害発生予測支援システムは、これらのデータを重ね合わせることで土砂災害の発生を予測し、それを地図上で画像表示したものをWebで提供するものです。

しかし、当初は画像の提示や提供の仕方に漠然としたイメージしかなくどうシステム化するか悩んでいたところ、従来から地盤解析に定評のあるCRCに提案いただいた「e-GeoMAP」を見て、これだと思いました。そこでCRCに概念設計からプロトタイプの開発、Web上での提示まで全面的にサポートしていただくことにしました。画像提示については、つくり込みからCRCへお願いしていますが、思っていた以上にスムーズで満足しています。

3つのシステムからの情報を統合して、危険度を細かく予測、表示。 

土砂災害発生予測支援システムは、次の3つのシステムから構成されています。

(1)MPレーダと降水量推定システム

従来の気象レーダが2.5kmメッシュであるのに対し、MPレーダは500mメッシュと細かい上に、水平と鉛直両方向での観測ができるという特徴があります。現在は神奈川県海老名市に設置され、半径80kmの地域を6分間隔で観測しています。これらの観測データを準リアルタイムで降水量に変換し、土砂災害発生予測支援システムと表層崩壊発生予測システムへ送信します。

(2)表層崩壊発生予測システム

降水量推定システムから送られた降水量データを基に、対象地域の表層崩壊発生危険度を準リアルタイムで計算し、土砂災害発生予測支援システムに送信します。

(3)地すべり地形分布と、地すべりの発生危険性と被災域の範囲の推定

丹沢から伊豆半島東部を対象として、地すべり地形分布図データベースを基に、個々の地すべりの発生危険性と地すべりが発生した際の崩壊土砂による被災域の範囲を推定します。この結果は土砂災害発生予測支援システムに貯えられ、随時、最新情報に更新されます。

(4)土砂災害発生予測支援システム

以上のシステムからの情報を統合し、インターネットGIS上に降水量分布と危険箇所を表示し、約6分毎に最新情報へ更新されます。表示方法としては、危険箇所と降水量分布などの重ね合わせ画像の表示や視覚的にわかり易いように3次元表示も可能です。また、過去の降水量と表層崩壊危険度の分布は、時々刻々と変化するアニメーション画像として表示することも可能です。これらは、インターネットを介してWeb上で閲覧できます(防災関係機関対象)。

土砂災害発生予測支援システム構成図 資料提供:防災科研様 土砂災害発生予測支援システム構成図
資料提供:防災科研様

現在、日本に2台しかないMPレーダは、メッシュが細かいので集中的に降る地点を特定でき、雨粒の大きさと形状を考慮した観測ができるので、降雨量の推定誤差を従来の200%から30%まで大幅に低減させることができました。また、インターネットGISと3次元、準3次元表示機能を組み合わせることで、土砂災害危険地域の3次元表示、準リアルタイム(6分間隔、500mメッシュ)での降雨量分布表示、準リアルタイム(6分間隔、50mメッシュ)での表層崩壊危険度分布表示、種々の災害情報の透過・重ね合わせ表示など多彩な情報をオンラインで見ることができます。このように土砂災害発生予測支援システムは、これまでにない画期的なシステムと言えます。

レーダ雨量・表層崩壊危険地の表示と土砂災害危険地域の3次元画像表示例 レーダ雨量・表層崩壊危険地の表示と土砂災害危険地域の3次元画像表示例

より高い完成度をめざして。

土砂災害予測支援システムはプロトタイプが完成、本年7月から防災専門家への提供を開始しました。情報を公開することにより専門家にモニター役となってシステム自体の評価をしていただき、修正すべき点は手直しし、より完成度の高いシステムとして2005度の完成を予定しています。

このプロジェクトは2005年度で一応区切りをつけることになっています。しかし、2006年度以降もシステム自体は動いていくので、将来的には危険斜面の地上モニタリングデータなどを表示に組み込み、より緻密なシステムへバージョンアップしていくとともに、数時間先の雨量分布予測と危険度予測ができるようなシステムにしたいと考えています。

自然には逆らえないというものの、毎年のように繰り返される土砂災害による被害を最小限に抑えるのに、土砂災害発生予測支援システムは強力なツールと言ってもいいでしょう。ただ当研究所は研究機関であり、このシステムも研究用であることから、“予報”という形で今すぐ一般に公開されることはありません。このシステムが多くの人に利用・検証されつつブラッシュアップされることで、将来的には予報機関の実用システムとして活用されることを期待しています。

本プロジェクトは、インターネットを介してわかり易く解析結果を提示することが大きな課題でした。CRCは地盤解析の実績に加え、画像処理やそのWeb上での提示手法などにも優れた技術があり、トータルにサポートしていただけたことが、このシステム開発成功の一因と言っていいでしょう。今後ともCRCと協同して、よりよいシステムにするために磨きをかけていきたいと思います。

インタビューを終えて │ 後 記 │Editor's notes
土砂災害発生予測システムの構築・運用をお手伝いすることで、土砂災害の被害軽減に少しでもお役に立てたことは、CRCとしても大変嬉しく思います。同時に、防災科研様との協同によるシステム開発を通じて、CRCもこの分野における技術レベルをさらに高めることができました。今後もご利用者の視点からアドバイスをいただくことで、さらなるレベルアップを図って参りたいと思います。

防災科研の福囿様には貴重な時間を頂戴し、誠にありがとうございました。

名称 独立行政法人 防災科学技術研究所
独立行政法人 防災科学技術研究所
http://www.bosai.go.jp/
本社所在地 茨城県つくば市天王台3-1
創業 1963年4月 国立防災科学技術センター設立
2001年4月 独立行政法人 防災科学技術研究所設立
理事長 片山恒雄
予算規模 129億3900万円(平成16年度)
職員数 役員4名(1名非常勤)常勤職員109名(平成16年当初)
主な事業概要 防災科学技術に関する基礎研究および基盤的 研究開発。特に「地震災害の軽減に資するための総合的な研究開発」および「地震・火山、災害、気象災害、 土砂災害 等の防災上の社会的・政策的課題に関する総合的な研究開発」に重点を置いて研究を進めている。