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複合材技術コラム

Composites Dream

複合材料の設計・製造・安全性評価のための解析について

大阪大学 名誉教授 / 大阪大学大学院 特任教授:座古 勝

その1 特性評価の必要性

複合材料は、その比強度(強度/比重)や比剛性(弾性係数/比重)が他の構造材料よりも優れていることから、その特性が要求される、宇宙や航空機の構造体、自動車などの車体、運搬用機材などに適用されている。今後、更なる用途拡大のためには、強度、機能や性能も含めた簡便で高機能な解析手法が重要と考える。

複合材料の構造設計解析で考慮しなければならない点は、大別して、異方性(力学的特性の方向性)や材料非線形性などの力学的特性の評価と製造・成形に関わる不均質性や残留応力の評価の2点であろう。以下に、これらについて概説したい。

力学的特性の評価には、異方性(力学的特性の方向性)と材料非線形性がある。異方性は、単純引張り負荷においてもせん断変形やねじり変形となるクロスエラスティシティー現象を発生させる。この特性を利用すれば、矩形板材の1辺を固定された片持ち状況で不均質圧力を受けても一様分布のように変形する構造が設計できる。また、ゴルフシャフトでは、ねじり特性は球の方向性に影響し、曲げ特性は飛距離に影響するので、個人に合せた特性を有するシャフトが設計できる。問題は、これらの特性の再現や確認の解析が可能かどうかである。その解析の良否が、設計評価に繋がると言っても過言では無い。

材料非線形特性については、荷重‐伸びの関係が非線形であっても、ゴム材などの様に除荷すると元に戻る特性と降伏や損傷などにより元に戻らない特性に分けられる。両者を区別するために、便宜上、前者を材料非線形性、後者を構造非線形性と区別する。

次いで、成形や製造に関わる不均質発現や残留応力であるが、これは、構造強度の安全性評価に関わるので、重要な評価である。通常、マトリックス材料には、エポキシ、ポリエステルなどの熱硬化性樹脂、ナイロン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂が用いられる。いずれも成形時には加熱されるので、成形後には冷却過程を経て収縮する。また、熱硬化性材料では、成形性向上のために希釈材が添加されるが、加熱で揮発することから材料は収縮する。この様な収縮が、成形後には残留ひずみとなって現れる。 構造解析には、上記の異方性、残留応力・ひずみ特性の考慮が必須であるので、次回より数回に分けて、如何に特性を考慮するかを記述したい。

筆者「座古 勝」氏の略歴

座古勝 氏
1973年 石川島播磨重工業株式会社に入社、同社技術研究所に所属。複合材料と耐震関係の研究に従事。主任、課長を経て、1984年に退社
1984年 三重大学教育学部助教授、1991年教授。
主に、複合材料の力学的挙動解析方法、災害シミュレーションの研究に従事
1992年 大阪大学工学部教授。
主に、複合材料の力学的挙動解析方法、信頼性評価法、災害シミュレーションの研究に従事
1997年 大学院重点化に伴い、大学院工学研究科教授。
2004年 大学院工学研究科にビジネスエンジニアリング専攻設置に伴い、テクノロジーデザイン講座を担当、マテリアル生産科学専攻構造化デザイン講座を兼任。
主に、複合材料の力学的挙動解析方法、信頼性評価法、災害シミュレーションの研究に従事。
2008年 定年退職、名誉教授
2008年 特任教授として、大阪大学大学院 工学研究科 高度人材育成センターにて、人材育成の教育に従事、2010年より相談室を兼務。2014年より相談室に従事、現在に至る。